アサーティブコミュニケーションという言葉を耳にしたことはありますか?
良好な人間関係を築くための役に立つコミュニケーション方法のこと。
職場でうまくコミュニケーションが取れないと、業務に支障がでたり、ストレスによるメンタルヘルス不調を生じることもあります。
今回はアサーティブコミュニケーションの意味やメリット、実践方法などをご紹介します。
また、間違ったコミュニケーション方法を体験談とともに解説していますので、アサーティブコミュニケーションを身につけるための参考にしてみてください。
アサーティブコミュニケーションとは
アサーティブコミュニケーションとは、相手を尊重しながら適切な方法で自分の意見や考えを、素直に表現することを指します。
お互いを尊重しながら意見交換ができるため、良好な人間関係を築くことが可能に。
また、自分の意見が言えないことで生じるストレスを軽減することもできますので、身につけるべきスキルと言えるでしょう。
アサーティブコミュニケーションを取り組むメリット
アサーティブコミュニケーションを実践することで、職場環境の改善や従業員のモチベーションアップといったメリットが期待できます。
では、どのようなメリットかを詳しくみていきましょう。
コミュニケーションの活性化
アサーティブコミュニケーションが使えるようになると、やりがいをもって活き活きと仕事ができるようになるため、人間関係が確実に改善します。
相手を思いやりながら自分の意見を伝えることは、意見交換が円滑に行われたり、チーム内の結束力が高まったりといった、いわゆる、『風通しの良い職場環境』へと改善が期待できます。
お互いの素直な気持ちを知れ、そしてそれぞれが納得のいく結論に辿り着くことで、より親密な関係になれるといえるでしょう。
また、自分の意見が他者に否定されずに、安心感をもって発言できるようにもなりますので、心理的安全性の高い職場を目指すことも可能になります。
職場での情報共有が進めば、適切な仕事量や役割分担が可能となり、業務の効率が向上すると考えられます。
また、自分の意見を我慢することなく言えるようになるため、活発な意見交換から新しいアイディアが生れる機会が多くなるでしょう。
業務の効率化に伴い、新しいアイディアを実践に移す時間や気力を確保することも可能に。
常に変化のある職場であれば、従業員のモチベーションがあがりますので、企業の生産性向上へとつながるでしょう。
ハラスメント防止
アサーティブコミュニケーションが浸透した職場では、コミュニケーションの質が高まりますので、ハラスメントを防止できます。
自分も相手も大切にするコミュニケーション方法は、お互いの人権を尊重した接し方をしようとするものであり、ハラスメントとは対極にあるといえます。
相手の気持ちを配慮した伝え方、また相手の意図を考慮した受け取り方のスキルを身につけることで、ハラスメントが起こりにくい好循環が生れることでしょう。
メンタルヘルス対策
周りからどう見られているか、また相手の気持ちが気になって、自分の意見をはっきりと伝えられないという人も多いのではないでしょうか。
自分の意見をうまく伝えられないことでストレスが溜まり、メンタルヘルス不調を引き起こしてしまうこともあります。
アサーティブコミュニケーションでは、遠慮したり我慢することなく自分の意見を伝えることができますので、良好なメンタルヘルス対策となるでしょう。
大切な4つの心構え
アサーティブコミュニケーションを実践する際に必要な、『4つの心構え』を解説します。
1つでも欠けると、アサーティブコミュニケーションは成り立ちません。
誠実
誠実とは、自分の心にも相手にも嘘をつかないこと。
相手を優先しすぎて、自分の本当の気持ちを押し殺してはいけません。
自分自身に対して、誠実であることを心がけましょう。
率直
主語を『私』にして、率直に意見を伝えることが重要。
遠回しな表現や、「全員の意見は~」「上司がこう言っていました」のような、第三者を主語にした表現はアサーティブコミュニケーションではありません。
自分の意見を伝えることが大切です。
対等
相手と対等な関係でコミュニケーションをとること。
部下や上司によって威圧的であったり、控え目であったりと、相手によって態度を変えるようなことはあってはいけません。
相手が誰であっても、落ち着いて堂々と意見を言えるようになりましょう。
自己責任
自分の発言の結果、起きることは全て自己の責任であること。
相手が攻撃的な発言をしてきたり、自分の主張が通らなかったりしたとしても、その原因は相手が悪いと決めつけるのではなく、自分にも責任があると自覚しましょう。
言った責任も、言わなかった責任も全て自分で引き受けることで、状況を好転させる行動を起こせるようになります。
アサーティブコミュニケーションの実践ポイント
アサーティブコミュニケーションのメリットを最大限にいかすためには、従業員全員がアサーティブコミュニケーションを体得することが望ましいです。
ここでは、実践する際に重要となる4つのポイントをご紹介します。
事実を描写する
具体的かつ客観的に事実のみを伝えます。
遅刻してきたことを例にしてみていきましょう。
正しい伝え方:「あなたは待ち合わせ場所に5分遅刻してきた。」
間違った伝え方:「(遅れてきたことに対して)私のことを大切に思っていない。」
自分の感情や思い込み、推測を入れないようにしましょう。
感情を伝える
事実に対して、自分の感情を伝えます。
正しい伝え方:「時間になっても来ないので、不安になった」
間違った伝え方:「時間になっても来ないので、ぞんざいな扱いを受けた」
冷静になって、相手に感情や意見を伝えることが大切です。
求めるものを提案をする
自分の感情を伝えたあと、自分が求めるものを具体的に伝えます。
正しい伝え方:「遅刻するときは、分かった時点で連絡ください。」
間違った伝え方:「遅刻してくるなんて、この約束はどうでもよいと思っていませんか?」
一方的に意見を押し付けるのではなく、あくまでも提案や依頼をするようにしましょう。
行動の選択をする
自分が求めるものを具体的に提案したあと、相手の回答がyesまたはno、それぞれの場合に自分がとるべき行動を選択します。
正しい伝え方:「連絡をしてくれれば待つが、なければ帰ります。」
間違った伝え:「どうして連絡してくれないのか。この商談はなかったことにしよう。」
このとき、前述の「求めるものの提案」表現に戻ってしまわないように注意しましょう。
人間関係を悪化させやすいコミュニケーションとは
アサーティブコミュニケーションは、相手に配慮しつつ自分の意見を表現する方法です。
これに対して、自己中心的になる3つの表現方法もあります。
いずれの方法も、人間関係の悪化につながりかねませんので、しっかりと理解しましょう。
攻撃的な自己表現
相手の気持ちよりも自分を優先し、一方的に主張を押し通したり、自分の意見が認めてもらえないと感情的になったりと、自分を大切にして相手を大切にしていないコミュニケーション方法です。
自己中心的な表現では、相手への配慮が欠けることになりますので、良い印象を持ってもらえず信頼関係の構築ができません。
また、相手を萎縮させてしまい、防御的態度を相手にとらせてしまうといった状況にもなりかねません。
受身的な自己表現
こちらは攻撃的な表現とは真逆の、非主張的な自己表現をすることです。
相手との言い争いや対立を恐れて、相手を優先させて自分の意見をはっきりと言わないことが特徴。相手を大事にし、自分を大切にしないコミュニケーション方法です。
周囲の目を気にするあまりに、自分の意見や感情を抑え込むことで不安や不満を募らせた結果、ストレスをため込んでしまう傾向に。
一見、相手を思いやるコミュニケーションのようにみえますが、自己防衛といった自己中心的な考えをもつコミュニケーション方法といえるでしょう。
行為的な自己表現
まわりくどい言い方で自分の意見を伝える自己表現方法です。
攻撃的な自己表現はしませんが、自分の気持ちを露骨な態度で表現したり、遠回しな言い方をするなど、いわゆる、相手に察してもらえるように会話を進めていくコミュニケーション方法。
「嫌味な人」や「気を遣わせるめんどくさい人」というような、マイナスな印象を与えてしまいます。
アサーティブコミュニケーションの活用方法
効果的な1on1ミーティングの実施
上司と部下がじっくりとお互いの意見を話し、そしてしっかりと聞くためには、アサーティブコミュニケーションが必須となります。
1on1ミーティングでは、攻撃的な自己表現をするのではなく、相手の話をきちんと受け止めてから自分の考えを話すことを心がけましょう。
丁寧なコミュニケーションをとることで、それぞれの意図のすれ違いがなくなり、充実した1on1ミーティングを実施できます。
満足度が高いミーティングを行うことで、従業員のモチベーションを高め、能力を伸ばすことができるでしょう。
上司(マネージャー)視点での部下とのコミュニケーション
部下とのコミュニケーションで気をつけるポイントは、「ハラスメントになっていないか」というところではないでしょうか。
特に、部下に指示をするときは言葉に気をつける必要があります。
ハラスメントにならない対話方法を体験談を通して説明します。
体験談
実は、私の体験談なのですが、部下の育成には、解決策だけを伝えれば部下のためになると思っていたことがあります。
部下が仕事に悩んでいたので、良かれと思って「Aに対しては、こうすればいいよ。」とやり方を伝えました。
部下は指示通りに処理を行ったのですが、どこか不満げ。
後日談によると、その部下は優秀な部下であり、私の指示したやり方ももちろん、自分で考えてついていたそうです。
部下はBというプランも考えており、それを実行するにはどうすれば良いかを悩んでいたところに、「こうやりなさい」と指示されたと感じて不機嫌になったとのこと。
私は知らぬ間に攻撃的なコミュニケーションをしていました。
では、どうすればよかったのでしょうか。
この場合は、まずは部下が何に悩んでいるかを聞き出し、一緒に解決策を見つける必要があります。
例えば、
①「いつもならすぐに出来ていることなのに、今回は悩んでいるようだけどどうした?」
彼が優秀なことを最初に話題にし、事実(悩んでいる姿)を伝えます。
そして、彼の悩みを聞き出して、それに対して意見を伝えます。
このとき、上から命令するのではなく、部下の意見を取り入れつつ、他の提案もしてみましょう。
②「なるほど、私はA案が良いと思ったが、B案もできなくはないね。B案をするにあたって何か気がかりなことはある?」
ここでも、部下が何に悩んでいるかを掘り下げて質問します。
③「その悩みに関しては、こちらでフォローできるので、他の部分を君が進めていくのはどうだろうか?」
部下の提案を受け入れることで、本人のやる気につなげます。
また、難しいところを上司がフォローすることで、部下との信頼関係も築けるでしょう。
部下の意見を聞き出すことは簡単ではありません。上司に萎縮して話せない人もいるはずです。
上司から場を和ます話題をして、部下が話しやすい環境を整えることが「自分も相手も大切にするコミュニケーション」の第一歩となります。
便利なツールのご紹介
部下とのコミュニケーションでは、悩みや不満等を把握することで、アサーティブコミュニケーションをうまく実践できるようになります。
そこで、役に立つ便利ツール「パルスアイ」をご紹介いたします。
パルスアイとは、社員のエンゲージメントを高め、離職率改善やマネージャー育成に役に立つ組織改善ツールです。
パルスアイを使えば、月1回の従業員アンケートで本人の調子や悩みを把握することができたり、エンゲージメントを高める課題を特定できます。
調査結果をもとにアサーティブコミュニケーションを実践した面談を行えば、従業員の満足度が高まり、会社への貢献度があがることが期待できます。
従業員のエンゲージメントを高めることは、業績向上につながることでしょう。
また、離職率低下や休職者を未然に防ぐ効果も期待できます。
まとめ
アサーティブコミュニケーションは、日常生活でも職場でも役に立つコミュニケーション方法です。
自分も相手も大切にしたコミュニケーションが実践できれば、日々の生活に生きがいを感じることができるでしょう。
コミュニケーションを改善することは簡単ではありませんが、「大切な4つの心構え」や実践のポイントを思い出して、ベストなコミュニケーションを試みてはいかがでしょうか。