話題のChat GPTとは

2023年になってから、Chat GPT(チャットGPT)に関する話題が急激に増えてきました。Googleトレンドを見ても、半年前(2022年9月)はほぼ検索もされてなかったですが、2022年12月くらいから徐々に検索ボリュームが増え始め、年明けから一気に話題に上がることが増えました。これは、Open AIは2022年11月30日にChatGPTを無料公開したことによるもので、公開から1週間で100万ユーザ、2ヶ月で1億ユーザに到達するなど、過去のどのようなサービスよりも早く普及しています。

このChat GPTが何かといえば、AI研究機関である米国のOPEN AI社が開発した超高性能の対話型AIです。

Chat GPTは、OpenAIが開発した自然言語処理のための人工知能技術であり、大規模なデータセットを学習して自然言語生成や質問応答などのタスクに対応できます。Chat GPTは、多数の言語に対応しており、対話形式で人工知能とやり取りすることができるようになっています。Chat GPTを利用することで、自然言語による問い合わせや会話に迅速かつ正確に応答することができます。

ChatGPTに「ChatGPTとは何ですか?」とした時の回答

GPTとは、Generative Pretrained Transformer(生成的な事前学習トランスフォーマー)の略で、大量のテキストデータの学習を行い、人間のような自然な文章を生成することが可能なAIです。Chat GPTは、GPTの中でも、最新版のGPT-3.5をベースにしており、桁違いに膨大なテキストデータを用いて学習することで、ファインチューニングを必要としない言語モデル(=大規模言語モデル)を作り出しています。ゆえに、どのような質問に対して、自然で滑らかな回答を返してくれます。ChatGPTの回答の日本語としての流暢さは驚くべきもので、少し前のチャットボットのレベルとは別次元であることがよく分かります。(※ChatGPTのより詳しい解説は、こちらを参照ください)

Chat GPTの始め方

Chat GPTの始め方は、簡単です。本サイトのログインページ(https://chat.openai.com/auth/login)に行き、アカウント登録をするだけです。(※現在、大人気なのでアカウント登録できなかった場合は、ウェイトリストに登録しましょう)

アカウント開設後、ログインすると、Chat GPTのトップページが開きます。

使い方は簡単。日本語対応しているので、テキスト入力欄に、聞きたい質問を入力するだけです。入力すると、AIが少し考える時間が発生しますが、回答が生成され、表示されます。

ビジネス(仕事)におけるChatGPTの使い方

さて、それでは本論に入りますが、企業経営や組織運営などビジネス(仕事)において、Chat GPTはどのように利用できるのでしょうか? 

Chat GPTができること

自民党による「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」にて、2023年2月17日に東大松尾豊先生より提案されている資料がわかりやすいのでご紹介します(PDFはこちら

松尾研究室「AIの進化と日本の戦略

Chat GPTができることとして、「文章の添削、校正」「文章や概念の要約」「壁打ち、ブレインストーミング」「リサーチ、論点の洗い出し」「アイデアの提案」に5つを提示しています。その内、前者2つ「文章の添削、校正」「文章や概念の要約」は、従来のAIよりも精度が大幅に向上し、後者3つ「壁打ち、ブレインストーミング」「リサーチ、論点の洗い出し」「アイデアの提案」は、以前のAIではできなかったことができるようになっているとしています。

実際、Chat APIを使った相談やブレスト、リサーチ依頼、アイデア(施策や解決策)の提案などは、まるで人間を相手にしているかのような自然で的を得た回答が返ってきます。

ビジネスの現場において、何が変わり、何が変わらないのか?

松尾研究室「AIの進化と日本の戦略

重要な点は、今後ビジネスの現場においてどのような変化がもたらされるかです。

松尾先生によると、まず既存ツールの変化として「検索がなくなる可能性」「OFFICE製品が全部変わる」の2つを指摘しています。
私見ですが、「検索がなくなる可能性」はまずないでしょう。検索は、複数の情報を関連性が高い順に回答するのに対して、Chat GPTは、1問1答で、単一の回答をするので、用途/使い方が変わってきます。なので、検索がなくなる可能性はほぼないでしょうが、検索行為が大きくChat GPTに切り替わることで、Googleが独占していた検索市場に大きな変化がもたらされる可能性は高そうです。

「OFFICE製品が全部変わる」点について、全てのOFFICE製品に、ChatGPTが実装される可能性は高いでしょう。そうすると、ワードで文章を作成する/添削する/要約する、パワーポイントでスライドを作成する、エクセルで表計算する/集計する/グラフを作るなど、今まで人間が行っていた作業が、ChatGPT(AI)に置き換わることになるので、劇的な生産性の改善を生み出す可能性がありそうです。

「目的に特化したChatGPTの出現」も見過ごせません。後述されますが、Chat GPTはニッチな領域で、正確な回答を回答し続けることがまだ得意ではありません。そこで、専門領域の学習をさせることで、「目的に特化したChatGPTの出現」が可能となり、様々なビジネスの現場で大いに役立つことでしょう。法律、会計、医学に加えて、不動産、建築、製造、化学、コンサル、物流、ITなど様々な業界で、業界固有の学習を積ませることで、ビジネスの最前線で働く社員をサポートするナレッジパートナーとして役立つことになると考えられます。

まさに、シンギュラリティは目の前に来ていると言っても過言ではないかもしれません。(※シンギュラリティ:人間の脳と同レベルのAIが誕生すること。技術的特異点とも言う)

参考:Chat GPTが考えるChat GPTの使い方

ちなみに、参考までに、Chat GPTはどのような使い方が可能かをChat GPTに聞くと、「自然言語処理」「チャットボット」「言語翻訳」「コンテンツ生成」「知識ベースの構築」「自己学習」ができるという回答が返ってきました。

少し、イメージが湧きづらい回答もあるように思いますので、Chat GPTをビジネスで活用する上で、実際にどのような利用方法が現実的か実例とともに、整理していきたいと思います。

ビジネス(仕事)におけるChat GPTの利用例

それでは、ビジネスの現場においてChat GPTをどのように利用することができるか、その実例を「リサーチ(情報収集と比較分析)」「ブレスト& 案出し」「コンテンツ生成(サンプル作成)」「顧客対応(カスタマーサポート)」「従業員サポート(相談/助言/壁打ち)」に分けてに紹介・解説していきます。

リサーチ(情報収集と比較分析)

Chat GPTに調べたいことの調査や比較分析を依頼すると、スピーディに回答をしてくれます。インボイス制度について質問すると、大体合っている回答が返ってきました。

日産自動車の企業概要について聞くと、こちらも概ねまともな回答が返ってきました。

トヨタとテストの業績比較をお願いすると、素早く回答してくれましたが、テスラの売上や営業利益率は間違っている(※テスラの2021年通期の売上は538億2300万ドル、売上高営業利益率は14.6%)ので、必ずしも正確な情報を提供してくれるわけではありません。特に、数値については正確でないことも結構ありそうなので、この点は注意が必要です。

ChatGPTは、2021年以降の出来事や、時系列と共に変化する事柄について、事実(ファクト)を正確に回答するのが得意ではないようなので、ChatGPTの回答を鵜呑みにするのは良くないでしょう。

ブレスト& 案出し

アイデアのブレストや施策(解決策)の案出しは、ChatGPTが特に得意な領域と言っていいでしょう。
「部下のモチベーションを上げる方法を5つ以上教えて」と質問すると、結構まともな回答が返ってきました。

「当社はBtoBのSaaS事業を展開しています。新規の顧客獲得があまりうまくいっていません。新規顧客を効率よく獲得するために、具体的にどのような施策を打つべきでしょうか?」という質問に対する回答も、かなりまともなものでした。

コンテンツ生成(サンプル作成)

コンテンツ生成も、Chat GPTが得意とする領域です。何か、参考とするサンプルが欲しいときに、サンプル作成など有用と思います。

「営業日報のサンプルをお願いします」と依頼した時の回答です。

続いて「得意先が集まる賀詞交換会での挨拶文を作成してください。」と依頼した時の回答文です。あまり面白味はないですが、すっきり整理された無難な内容です。

「もうちょっとユーモアを加えてほしい」と依頼したところ、少しテンション高めのサンプルを作ってくれました(笑)

次に、長文のブログ記事の生成をお願いしました。

大企業で働くマネージャー向けに、マネージャーの悩み、部下を持つことの重要性、良いマネージャーとは、社員のモチベーション改善のヒント、マネージャーとして成長するためにすべきこと、部下との信頼関係構築のコツ、に関する記事を3000字程度でまとめてください

その結果が、こちら「良いマネージャーになるために」です。正直、人間のライターに依頼するのと、遜色ない記事をわずか数分で執筆してくれました。

コピペチェックした結果(↓)も良好です。ネット記事のコピーでないことがはっきり検証されています。

顧客対応(カスタマーサポート)

Chat GPTは、チャットボットとしても機能しますので、顧客対応に役立てることができます。近いうちに、API連携することで、様々なサービスでChat GPTを使うことができるようになるはずです。

「アクアビーズの遊び方」について質問したところ、かなり正確で有益な回答をしてもらえました。質問の仕方や内容によっても変わってくると思いますが、チャットボットとして問題なく機能してくれそうです。

「修理をしてほしい」など、具体的なアクションを求めた場合は、(当たり前ですが)対応してくれるわけではありません。

企業独自の情報を加味したり、企業側が望む回答をさせるためには、やはりファインチューニングが必要となってくるように思われます。

従業員サポート(相談/助言/壁打ち)

Chat GPTは、従業員サポートにも利用可能です。従業員の悩みの相談相手になる、ふとした疑問に答える、壁打ち相手になるなど、様々な用途で従業員の手助けとして活躍することができそうです。

「最近、夜眠れないことが多いです。ストレスが多いかもしれません。どうすればいいですか?」とのお悩み相談への回答は、真っ当な助言となっています。

追加の質問に対しても、真っ当に答えてくれます。

退職者が増えていることに対しての解決策の提案もしてくれます。

転職の相談をした場合でも、中立的で良いアドバイスをしてくれます。

まとめ:未来はどうなるのか?

ビジネス(仕事)において、Chat GPTがどのような場面で利用可能かを触れてきました。自然な日本語でスピーディに回答してくれるので、従来のチャットボットのような機械的(ロボット的)な対話ではなく、人間的な対話が可能になっているのが、大きな特徴(進歩)でしょう。

では、我々の未来はどうなっていくのでしょうか?
ハーバード・ビジネス・レビューの論考では、AIの発展により、仕事を失ったり、経済的な損失を被る人が一定層いるだろうと予想しています。

AIの最近の発展は、仕事に直接的な影響が及ぶ人々、そして適応に苦労する人々に対し、苦しい時期と経済的な痛みを確実にもたらすことになる。

ハーバード・ビジネス・レビュー「チャットGPTは産業にどのような破壊的変化をもたらすのか

未来に目を向けたときに、まず間違いないことは、ChatGPTと同様の「超高性能対話型AIが様々現れ、性能はさらに進化していく」ことでしょう。Googleは、既にBardという競合サービスを発表しましたし、日本でも、ChatGPTの競合サービスを立ち上げる動きがあるようです。ChatGPTは、マイクロソフトのBingにも実装され、毎日とてつもなく多くの自己学習を積み重ねていることを考えると、我々の予想を超えるスピードで、さらに洗練されていくかもしれません。

次に確実なのは、ChatGPTのような「超高性能対話型AIが、日常の様々なサービスにビルトインされ、日常生活及びビジネス世界において、無意識的にAIに支援される状況になる」ことでしょう。

慶応SFCの安宅先生の次のスライドが分かりやすいので、紹介します。


安宅 和人著「時代局面を考える」より抜粋

このスライドは、AIを取り巻く技術・プレイヤー(企業)・ユーザーの関係を俯瞰した図だと思うのですが、注目すべきは「Chat GPTの登場により、非開発系クリエイターも巻き込んだ形で価値が見直されている」という点です。これは、急速にAIの利活用が進んでいくということと、様々なアプリケーションにChatGPTのようなモデルが実装されていくという2つのことが示唆されています。ChatGPTの開発元であるOPEN AIは、外部サービスが、ChatGPTをAPI連携して利用できるようにすることを公表していますので、元々AI基盤技術を持っていない企業でもChatGPTを自社サービスに反映・提供できるようになるのです。

2023年3月にChatGPTのAPIがリリース!

OpenAIは2023年3月1日に、「ChatGPT」のAPIとして、最新モデルGPT-3.5-turboを公開しました。OpenAIは、今までも対話型AIのAPIを解放しており、(text-davinci-003)というモデルが最も高性能だったのですが、GPT-3.5-turboは、davinciモデルを上回る性能で、価格も従来の1/10という設定になっています。API連携も簡単にできるので、わずか数日で、GPT-3.5-turboを使った様々な対話型アプリがリリースされています。
※リリース済みのChatGPT APIを活用したサービス一覧は、こちらのページが参考になります。

また、パナソニックがCHatGPTを社内導入するなど、大手企業におけるChatGPTの活用も動き始めています。

システム開発などを手がける「パナソニックコネクト」は、アメリカ・マイクロソフトと対話AI「ChatGPT」の開発企業が提供しているAIアシスタントを、2月から社内で導入した。

FNNプライムオンライン「全社内に“ChatGPT”対話AIを導入 パナソニックコネクト」

ChatGPTの利用がホワイトカラーの生産性を大きく向上させたという報告も上がっているようで、企業や大学などでChatGPTを採用する動きは、これからますます加速しそうです。

twitter Takuya Kitagawa

3月14日にGPT-4がリリース!

ChatGPTは、GPT3.5という大規模言語モデルを採用した対話型AIです。GPT3.5においても、十分なほど高性能なAIなのですが、その進化版であるGPT4はさらに大きな進化を遂げるはずです。GPT4では、GPT3の1750億パラメータに対して、100兆以上のパラメータを持つとも噂されており、音声や動画への活用など、テキスト以外の領域で様々な活用方法ができるようになるかもしれません。

3月9日にドイツで開催されたイベント「AI in Focus – Digital Kickoff」にて、Microsoftドイツ法人のCTO兼リード・データ&AI STUのアンドレアス・ブラウン氏が、GPT-4が来週にも発表になることを明らかにした。

IT media 「GPT-4」は来週登場か? 独Microsoft CTOが言及

→という状況だったのですが、3月14日にGPT-4がリリースされました!
OPEN AIによると、GPT-4は大規模なマルチモーダルモデル(画像とテキストの入力を受け付け、テキスト出力を出すモデル)で、実世界の人間より能力が劣るものの、様々な専門的・学術的な領域では人間レベルの性能を発揮するとのことです。例えば、GPT-4は、司法試験の模擬試験では、受験者の上位10%程度のスコアで合格し、一方、GPT-3.5では下位10%程度のスコアだったということで、飛躍的に性能が高まっているわけです。司法試験レベルの難関テストで上位10%のスコアを出すということは、複雑で高度な知識系の領域では人間の能力を既に超えているわけですね。

現在GPT-4は、ウェイトリストに登録すると使えるようになるということなので、興味ある人は、こちらのウェイトリストに登録しましょう。

注意すべきは、APIの利用料金です。下表を見ていただきたいのですが、GPT-4のAPI利用料金は、Chat GPTのgpt-3.5-turboの15倍〜60倍の価格設定になっています。高性能になっている分、かなりお高くなったいますので、GPT-4をアプリ利用する場合には、使用量のコントロールをしっかり行う必要がありそうです。

GPT-4(32K)GPT-4(8K)Chat (gpt-3.5-turbo)
質問$0.06/1K tokens$0.03/1K tokens$0.002/1K tokens
回答$0.12/1K tokens$0.06/1K tokens$0.002/1K tokens

ちなみに、APIを利用する場合は、OPEN AIのマイページにて利用料金(月額)の上限設定ができますので、必ず設定しておくようにしましょう。ハードリミット(これ位以上はAPIが使えなくなる本当の上限)とソフトリミット(メールでアラートが飛んでくる上限)を設定できるので、自社の予算に合わせて設定しておきのが良さそうです。

マネージャーは、組織運営にChatGPTを活用しよう!

ChatGPTは、ビジネスにおいて様々な使い方が可能なのですが、その中でもChat GPTが得意な領域は、問題点の整理や解決策の提案、悩みの相談(壁打ち相手)なのです。だとすれば、マネージャーや社員のメンター的なサポートをChatGPTに担ってもらうというのは、超優秀な対話型AIの活用方法として有効だと考えられます。ChatGPTをメンター役として活用していただくことで、マネージャーの悩みの解決を支援し、さらには、マネージャーの成長につながることも期待できそうです。

こうした背景から、当社の従業員エンゲージメントサーベイ「パルスアイ」に、ChatGPTを「AIメンター機能」として実装し、この度リリースいたしました。

パルスアイ「AIメンター」の画面イメージ

AIメンターは、「問題点の整理」「解決策の提案」「悩みの相談」をしてくれます。マネージャーの組織運営に関する壁打ち相手として、最高のパートナーになってくれることを期待しています。
↓AIメンター機能のデモ動画をご覧ください。

パルスアイ上で発見できた課題を踏まえて、具体的なアクションにつなげる際に、AIメンターに相談しながら、施策の検討・選定につなげていただくという使い方ができると思います。

優秀な社員の予期せぬ退職を防ぐ組織改善ツール「PULSE AI」