従業員エンゲージメントという言葉は、日本でも徐々に浸透しつつある感がありますが、従業員エンゲージメントの意味を理解している企業人は5割に満たないのが実態です(2021年4月、弊社調べ)。今回は、従業員エンゲージメントの定義の確認をするとともに、企業において従業員エンゲージメントをどのように計測するべきかをご紹介をしたいと思います。

従業員エンゲージメントとは

「従業員エンゲージメント」とは、従業員が所属組織の成功に対して主体的に関与していきたいという心理的なロイヤリティ(帰属意識/貢献意欲)を有している状態、と定義することでき、様々な研究において、高い従業員エンゲージメントは、企業の高業績につながることがわかってきています。

従業員が所属企業のビジョンに共感し、そのビジョン達成に向かって主体的に関わっていこうとするならば、従業員のパフォーマンスは十分に発揮され、高い業績に繋がりやすくなるという説明(因果関係)は説得力が高いと言っていいでしょう。

では問題は、どうやってコンセプチュアル(概念的な)従業員エンゲージメントを正しく定量化するのか? ということになります。従業員エンゲージメントというのは、社員(従業員)の心理的な状態を指す概念ですので、数学の公式のように、唯一の計算式があるわけではありません。

従業員エンゲージメントサーベイ「パルスアイ」では、世界19カ国での大規模エンゲージメントサーベイを行うなど、従業員エンゲージメントの研究において先進的な取り組みを行うADPリサーチ・インスティチュート(ADPRI)の調査手法を参考に、独自の計算式でエンゲージメントスコアを測定する方法を開発しました。

ADPRIの調査手法

それでは、ADPRIの従業員エンゲージメントの測定方法の紹介です。以下、長めの引用となりますが、ご覧ください。

ADPRIは2019年、世界の勤労者1万9000人以上のエンゲージメント・レベルを測定し、人材の引き寄せとつなぎ留めに最も効果的と思われる要素を割り出した。この調査では、政治的・経済的要因や個人の悩みなど、 一般に組織の力ではどうにもできない面ではなく、組織が影響力を発揮できるエンゲージメントに焦点を当てた。
調査においては、工ンゲージメントの真髄を浮き彫りにするために、チー ムメンバーの一人ひとりに以下の簡単な文章8つを示し、同意する程度を 「まったく同意しない」から「完全に同意する」まで5段階で評価してもらった。これらの文章は、ギャラップの研究者が初めて発表したものをもとに、 デロイトやシスコ、ADPなどのほか数社の研究者がその後に調整を加えている。最高の従業員経験が他と一線を画す理由を説明するうえで、最も信頼性が高く効果的であることが確認されている手法だ。
以下の8つの文章(ADPRIの調査で使用したものと同一)で表現しているのは従業員の心理状態や態度・姿勢であり、それがエンゲージメントや従業員の生産的な行動をもたらす「前駆症状」である。

<従業員エンゲージメントを測る8つの文章>
1. 私は、会社が掲げる使命に対して心から貢献したいと考えている。
2. 仕事上で、自分に期待されていることを明確に理解している。
3. 所属チームのメンバーと価値観が共通している。
4. 仕事で毎日、強みを発揮するチャンスがある。
5. チームメイトが私をサポートしてくれる。
6. 優れた仕事をすれば、認められることがわかっている。
7. 会社の未来は明るいと強く信じている。
8. 仕事では常に、成長が求められている。

ハーバードビジネスレビュー2019年11月号「チームの力が従業員エンゲージメントを高める」

ポイントは、ごく簡単な8つの文章に対する同意の程度(5段階)で従業員エンゲージメントを測るという計測の容易性と汎用性(=幅広く使える)ことでしょう。実際にADPRIでは世界19カ国で完全に同じ手法を採用し、高エンゲージメント従業員は上司に生産性が高いと認められることが格段に多く、向こう半年の間に離職する可能性が非常に低いこともわかったということです。

パルスアイでのエンゲージメント計測方法

パルスアイでは、従業員エンゲージメントを計測するために、ADPRIの8つの文章にタイトル(項目名)を設定するとともに、日本で働く社員(従業員)が答えやすい質問文に変換を行いました。

1. 私は、会社が掲げる使命に対して心から貢献したいと考えている。→理念への共感
2. 仕事上で、自分に期待されていることを明確に理解している。→自身の役割の明確さ
3. 所属チームのメンバーと価値観が共通している。→価値観の共有
4. 仕事で毎日、強みを発揮するチャンスがある。→能力適性
5. チームメイトが私をサポートしてくれる。→相互信頼とサポート
6. 優れた仕事をすれば、認められることがわかっている。→適正な昇給・昇格
7. 会社の未来は明るいと強く信じている。→会社の未来
8. 仕事では常に、成長が求められている。成長実感

↓質問文に変換

パルスアイにおけるエンゲージメントを測る8つの質問文

そして、この8つの質問は、3ヶ月に1度、5段階評価で回答してもらい、その回答結果を用いてエンゲージメントスコアの算出を行います。エンゲージメントスコアの算出にあたっては、8つの質問のウェイト(影響度)は同じではありません。Google社の機械学習モデル(AIモデル)を利用して、8つの質問(因子)がエンゲージメントへ与える影響度の強さをモデル化し、そのモデル(計算式)に基づいて、エンゲージメントスコアを算出しています。

このようにパルスアイにおけるエンゲージメントの測定方法は、世界的に実績のあるADPRI社の測定手法をベースにすることで、有効度の高いエンゲージメントのスコア化を実現しています。

パルスアイのエンゲージメントサーベイで何がわかるか?

それでは、パルスアイのエンゲージメントサーベイで何がわかるかをご説明したいと思います。

全社のエンゲージメント

パルスアイでは、3ヶ月に一度エンゲージメントを計測する質問(アンケート)が行われます。毎月、全社のエンゲージメントスコアを把握することができますが、基本的には3ヶ月に一度、エンゲージメントスコアの変化をチェックしていくことになります。

エンゲージメントスコアが70以上あれば、良い(健全な)エンゲージメントレベルにあると評価できます。

部署ごとのエンゲージメント

パルスアイでは、部署ごとのエンゲージメントスコアを比較することができます。マネジメントがうまくいっていると認識している部署のエンゲージメントがどの程度か、答え合わせができます。

部署のより詳細な分析も確認できます。最新のエンゲージメントスコアだけでなく、スコア推移、内訳の状況、現状評価と改善に向けての診断コメントも把握できます。

<診断コメントの例>
・エンゲージメントは、「普通」です。特に問題がある訳ではないですが、伸び代は大きいので、まずはエンゲージメントスコア「70」以上を目指してみましょう。
・エンゲージメントを構成する項目の中で、「価値観の共有」「自身の役割の明確さ」が高く、「会社の未来」「適正な昇給・昇格」が低いです。「会社の未来」を改善できれば、エンゲージメントの向上が期待できます。

↑のように、現状のエンゲージメントレベルに対する評価と、エンゲージメント向上に向けてのアドバイスを確認できます。

従業員ごとのエンゲージメント

また従業員ごとのエンゲージメントスコアの把握も可能です。エンゲージメントレベルが低くなっている社員(従業員)を把握し、個別にどのように改善していくかを検討するための判断材料を提供します。

いかがでしたでしょうか。
自社の社員のエンゲージメントを高めたい、社員のモチベーションが低いことに悩んでいるということであれば、組織診断サービス「パルスアイ」がお勧めです。