1990年代終わりに誕生した「心理的安全性」というキーワードが、ビジネスシーンにおいて注目されています。
心理的安全性とはどのような意味を指す言葉で、心理的安全性の高い職場づくりのためには、具体的に何が必要なのでしょうか。
働きやすい職場を目指すため、リーダーが心掛けるべきポイントと共にお伝えします。
心理的安全性とは?
心理的安全性とは、周囲の反応を恐れたり恥ずかしがったりすることなく、自分らしい姿を見せられる状態を言います。
1999年に、ハーバード大学付属ビジネススクールの組織行動学教授であったエイミー・エドモンドソン氏は、「サイコロジカル・セーフティ(psychological safety)」という言葉を提唱しました。
この言葉を日本語に訳したものが、「心理的安全性」です。
私たちは普段、集団の中で何かをするときに、以下のような不安を感じてしまいがちです。
・こんな発言をしたら、周囲から馬鹿にされるのではないか?
・周囲から拒絶される気がする…
・自分の行動がきっかけで、何らかの罰を与えられるのではないか?
こうした状態は、集団に対する信頼が失われた状態であり、自分らしく振る舞ったり、自由に発言したりすることが難しくなります。
心理的安全性の高い環境においては、私たちは「自分の言動がきっかけで馬鹿にされるのでは」「何らかの罰が下されるのでは」といった不安を抱えることはありません。 周囲に対して全幅の信頼を寄せ、自然体のまま自分らしく振る舞い、自由に発言できるようになるのです。
なぜ今心理的安全性が注目されるのか?
では、なぜ今、心理的安全性というキーワードが注目されているのでしょうか。
そのきっかけは、Google社が約4年にわたり実施した「プロジェクトアリストテレス」にあります。
Google社のプロジェクトの目的は、生産性を向上させること。
このプロジェクトを通じて、Google社は「生産性を向上させるためには、心理的安全性の高い職場であることが重要」という結論を導き出したのです。
生産性向上は、今、世界中の多くの企業が抱える課題の一つです。 「生産性向上のため、具体的に何ができるのか?」を考えた結果、心理的安全性の向上にたどり着くケースが増えてきています。
心理的安全性が高い職場で実感できるメリット5つ
ここからは、より具体的に心理的安全性について見ていきましょう。
心理的安全性が高い職場におけるメリットは、以下のとおりです。
従業員同士の対話が増える
企業にとって重要なイノベーションは、人同士の対話から生まれるケースも多いもの。
自分らしく自然体で会話できる環境の中では、自由な発想をどんどん伝え合えるでしょう。アイデアがアイデアを呼び、さまざまな価値観に触れることができます。
従業員同士の情報交換から知識量が増えたり、チーム全体の雰囲気が良くなったりする可能性もあります。
個々の能力が発揮されやすくなる
心理的安全性の高い職場においては、個々の強みが発揮されやすくなります。
自らの能力を隠すことなく、自然体で認め合えるため、生産性向上につなげていけるでしょう。
また、自分の意見が受け入れられる環境であれば、仕事に対する責任感や関心度も上昇します。
ミスの報告・共有から改善につなげられる
心理的安全性の高い職場であれば、ミスの報告もしやすくなります。
ミスを隠したり、自分一人でカバーしたりすることがなくなり、次の成長へとつなげられるように。
初期段階からチームとして対応できるため、傷も深くなりません。
ストレスが減少し、離職率の低下につながる
自分らしく過ごせる職場、自分の意見を受け入れてもらえる職場では、ストレスを感じる機会も少なくなるでしょう。
人間関係が良くなり、また自分自身の能力を発揮できる職場であれば、定着率も上昇します。
★目指すべきビジョンが明確化する
日々の自然な対話の中から議論が生まれ、チームや個人が目指すべき方向性を共有できます。
「何のためにがんばるのか?」「今何を目標に、この仕事をやっているのか?」といったビジョンを共有しやすく、より効率良くプロジェクトを進めていけるでしょう。
心理的安全性が低い職場の3つの特徴
では反対に、心理的安全性が低い職場とはどのような状態を指すのでしょうか?
以下の3つの条件に当てはまる点があれば、「心理的安全性が低い」と考えられます。
・上司や先輩に対して、相談や質問がしづらい
・自身のミスを報告しづらい
・自身の意見を発言しづらい
このような状況に陥っている場合、生産性向上を目指すのは難しいでしょう。
遠回りに思えるかもしれませんが、まず心理的安全性を向上させるところからスタートしてみてください。
心理的安全性を高めるために…リーダーが心掛けたい5つのポイント
心理的安全性が高い職場を作るためには、「リーダーがどう考え、どう動くか?」が重要なポイントとなります。
心理的安全性が高いかどうかは、リーダーにかかっていると言っても過言ではありません。
では、リーダーはどう行動するべきなのでしょうか?
具体的なポイントを5つお伝えします。
一人ひとりの考え方を認める
職場にはさまざまな考え方の人がいて、それぞれに良いところがあります。
個々の考え方や意見を否定するのではなく、お互いに尊重し合うことが大切です。
個性や考え方は、人によって違っているのが当たり前。
自分の考えを押し付けたり、相手の意見を否定したりするのではなく、「そういう考え方もあるのか」と尊重しましょう。
腹を割って話す機会を設ける
心理的安全性を高めるために、重要な役割を果たすのが人同士のコミュニケーションです。
リーダーが率先して話しやすい雰囲気を意識しましょう。
自身の過去の失敗談を話すのも効果的です。
また、「大勢の人がいるとどうしても発言をためらってしまう」という人がいるのも事実です。
1対1で話せる機会を設けたり、社内イベントで距離を近付けたりするのも効果が期待できます。
新人教育には時間をかける
心理的安全性は、新人時代から継続して育てていくのが効果的です。
新人が業務内容を覚えるのに時間がかかるのは、当然のこと。
チーム全体で新人を支え、育てていけるような仕組みを用意するのがおすすめです。
部下に対してポジティブな姿勢を見せる
心理的安全性を高めるために重要なのは、チーム全体のポジティブな姿勢です。
上司が率先して、ポジティブな考え方を取り入れ、積極的に周囲に伝えていきましょう。
上司の姿勢は、自然と部下にも影響を与えます。
前向きな意見や姿勢を大切にし、部下に前向きな姿勢が見られたら、積極的に褒めていきましょう。
個人評価だけに囚われない仕組みを整える
個人評価が全ての場合、「万が一失敗したら…」「あの人に比べて自分は…」など、ネガティブな思いに囚われがちです。
遠慮する気持ちから、自分らしく行動できなくなってしまう可能性も。
個人評価だけではなく、チーム全体として評価できる仕組みを整えれば、個人評価を気にし過ぎず、自分らしく能力を発揮できる人も増えていくでしょう。
「ルール化」には意味がない
職場の心理的安全性を高めようと、具体的な行動を起こす際には、その意味をきちんと理解しておくことが大切です。
心理的安全性の高い職場とは、単純に「みんなの仲が良いだけの職場」や「何を言っても罰せられない職場」というわけではありません。
これらのポイントを単純にルール化しても、心理的安全性は高まらないでしょう。
リーダーに求められるのは、ルールの設定ではありません。
むしろ、「反対意見や一見無価値な意見を含め、誰が何を言っても受け入れられる」という、職場の雰囲気を育てることが大切です。
職場全体の「暗黙の了解」にできるよう、一つひとつの行動を変えていきましょう。
心理的安全性を高めて生産性向上&働きやすい職場づくりへ
心理的安全性は、生産性を向上させるため、また働きやすい職場を作るために注目されているキーワードです。
「自分の職場(チーム)でも心理的安全性を高めたい」と思ったら、リーダーが率先して、その行動や考え方を変えていく必要があるでしょう。
心理的安全性がもたらすメリットはさまざまですから、ぜひ意識してみてください。
リーダーがほんの少し姿勢を変えるだけでも、部下に与える影響は大きなものです。
心理的安全性の重要性を理解した上で、具体的な取り組みをスタートしましょう。
PULSE AIを導入すれば、さまざまな組織課題を可視化できます。
心理的安全性向上のためにも、ぜひ役立ててみてください。