相手の本音を聞きたい場面で、うまく答えてもらうことができなかった。
同じ質問をしても、自分と他の人では引き出せた情報量が全然違った。
自分は知らなかったのに、なぜか自然と情報が集まる人がいる。
そんな経験に心当たりはないでしょうか。
こういった状況を改善したい場合に、一つのカギとなるのがマネージャーやチームリーダーの「質問力」です。
毎日誰かに質問をする機会があるかと思いますが、質問力を磨くことで、相手の本音をより引き出しやすくなります。質問力を向上させることで、日常的な会話や、面談、商談などの際にもより相手と深い話ができるようになるでしょう。
今回は、マネージャーやチームリーダーにとって重要なチームの生産性を高める「質問力」をテーマに、書いてみたいと思います。
相手の本音を引き出せる質問力とは?
質問力について
質問力とは、「相手に疑問点や不明点を問いかける能力」のこととされています。
質問することで相手のことをこれまでよりも深く知り、相手も「この人と話してよかった」と思って会話を終わることができることが大切です。
ビジネスにおいては、適切な提案をしたり、相手の状況を把握したり、議論するために非常に重要な要素といえます。
質問力は、どんな人でも身につけて磨いていくことのできるスキルです。
普段仕事をする中で、毎日質問をする機会はあると思いますので、すぐに実践できて変化を実感しやすいものでもあります。
質問にも質がある
ただ問いかけることと、意識して問いかけを工夫するのでは、相手から引き出せる内容が全く変わります。
質の良い質問の基本は「相手に合わせた言葉で」「意味が理解しやすい質問」です。
「その発想は自分になかった!」という、気づきを促すことができる質問や、
「考えたことがなかった」という気づきを相手に与え、さらなる内省や深い思考につながる質問もとても良い質問と言えます。
反対に、何を聞かれているのか理解しにくい質問は、デメリットがたくさんあります。
相手も何を答えたら良いかわからなくなり、その結果として的の外れた答えが帰ってくることにつながります。
相手から、全然聞きたいことと違う答えが返ってくる場合は、自分の質問の仕方を見直してみましょう。
なぜ今注目されている?
コロナ禍でリモートワークが働き方の一部として社会に浸透しました。
これまでも複業に注目が集まっているなか、働き方の多様性が多くの人に受け入れられるようになっています。
商談や面談がオンラインで行われることも、珍しくなくなりました。
これまで通りのコミュニケーションとは違う課題が発生し、何かしら工夫が必要と感じる人が多くなっています。
また、若い世代を中心に、動画配信やSNSで収益を得たり、個人で自由に働くことを発信する人がとても増えてきました。
また、一つの企業での就労ではなく複業を前提にしていたり、すでに個人で稼いだことのある世代が、社会に出てきています。
こういった社会の変化もあり、「働く場は自分で選択するもの」という価値観が急速に広がっています。
エンゲージメントの高さや、eNPS結果の良い職場に人気が集まるのも、「自分らしく安心して働ける場」としての職場に魅力を感じる人が多いようです。
そのような働き方や仕事に対する新たな価値観と、従来の価値観が混在する職場では、マネジメント層の「人間関係を調整する役割」の比重が大きくなります。
その中でカギとなるものとして、近年1on1やチームビルディングなど、「対話の場」の重要性に注目が集まっています。
そういった対話の場で、うまく本音を引き出すことを苦手とする人も多く、質問力に注目が集まっていると言えるでしょう。
質問力を上げることのメリット
1 相手との信頼関係構築につながる
質問して相手を知っていきながら、質問で会話のキャッチボールを重ねていきます。
そうすることで、相手の本音を引き出すとともに、こちらの思いも伝えることができ、信頼関係を築いていくことができます。
しっかりと信頼関係構築ができているチームは、もちろんパフォーマンスやエンゲージメントも高まります。
最終的には職場への定着率もアップすることにつながります。
商談などの場面では、短い時間で関係構築をして、成果を出していく必要があります。
その場合には、質問力を身につけることで、より早いタイミングで深い話をしていくことができるようになります。
2 相手にきちんと見ていることを伝えられる
相手をよく見ているからこそできる質問があります。
日々の仕事への姿勢や、会議中の発言の語彙力や言い回しなど、変化を見つけたら素直に「何か努力したの?」と尋ねてみても良いかもしれません。
自分の努力や変化に気がついてくれる存在が身近にいると、それだけでモチベーションが上がったり、パフォーマンス向上にもつながります。
営業先や顧客などの場合は、その人がこだわっていそうなところはないかをよく観察し、そこに触れた質問をすることでぐっと距離が近くなります。
注意点としては、目に付きやすいためつい触れたくなるのですが、容姿に関して触れる質問は相手が話題にしない場合はなるべく避けましょう。
男女関係なくセクハラととられるリスクもあり、相手に不快感や仕事上の関係性に違和感を与えることもあります。
あくまでもきちんと見ていることを伝えるのは、仕事への取り組みや本人の努力していることについてにするのが良いでしょう。
3 仕事へのエンゲージメントを高めることができる
一緒に仕事をするチームにおいての大きなメリットは、仕事へのエンゲージメントを高めていくことができる点です。
相手の要望、考え、意図を適切に話してもらえるようになると、こちらからの提案や議論の方向性を相手に合わせて変化させることができます。
部下との1on1などでも、質問力を活用してこちらから働きかけることで、相手も「自分の意見が反映されている」「考えを取り入れられている」という実感がわきやすくなり、結果としてエンゲージメントが高まります。
4 周囲の人の本音が集まるようになる
日々、質問力を生かしてコミュニケーションを取ることで信頼関係構築ができていると、だんだんと黙っていても周囲が本音を話してくれるようになります。
そうすることで、マネジメント層としても非常に仕事がしやすくなっていくでしょう。
心理学から考える、質問の種類と工夫
クローズドクエスチョン
「はい」「いいえ」で答えられるような質問のことです。
答える範囲が限られていることから、クローズドクエスチョンと言われます。
メリットは、相手が答えやすいということ、返答がすぐにもらいやすいことです。
デメリットとしては、こちらにその次に会話をつなげていくスキルや話題がないときは、会話が途切れてしまったり、「質問をしたは良いが会話が続かない気まずさ」が発生する可能性があることです。
オープンクエスチョン
「あなたはどう思いますか?」などのように、「はい」「いいえ」で答えるのではなく、相手が自由に答えることができる質問です。
メリットは、自由に答えてもらう質問であるため、会話が広がっていきやすいことです。
デメリットとしては、答えに自由度があるがゆえに、相手に心理的不可をかけてしまう可能性があることです。
質問の切り口を工夫しよう
5W1Hだけではなく「あなたはどう思うか」
質問の基本として、5W1Hを尋ねて会話の内容をクリアにしていくという手法があります。ここを質問していくことで、事実や見通しがはっきりとしていきます。
・When 誰が
・When いつごろ、いつまでに
・What 何を、何が
・Why なぜ、どうして、どういった理由で
・Where どこで
・How どのように
これらの内容を確認するだけの質問だと、事務的になりすぎたり、高圧的に受け取られてしまうこともあります。
5W1Hを確認しながら、要所要所で、相手はどう思うかを確認したり、負担に思っていないかなどの質問を織り交ぜていくことが大切です。
それにより、「事実の確認ではなく、自分の思いを反映しようとしている」という印象を相手に与えることができます。
感情ワードで質問
感情を吐き出すとぐっと距離が縮まる
ネガティブな問題解決のために質問をすることもあるでしょう。
「このプロジェクトを進める上で、一番「困ったな」と思うことはなんですか?」
「このツールを使う上で、我慢できない部分はありますか?」
「今のチームに関して、あなたがストレスを感じる部分は率直にどこでしょう?」
このように相手がどう思うか、または顧客がどう思うか、などの質問をする際に、感情ワードを織り交ぜて質問すると、相手は具体的にその場面をイメージして考えることができます。
特に、相手がネガティブな感情を吐き出したときには、ぐっと距離が縮まりやすくなります。
まずは自分の意見を挟まずにとにかく徹底的に傾聴し、相手が話したことを少し深堀りするような質問を織り交ぜましょう。
そうすることで、より詳しく本音を引き出すことができます。
相手が「つい話したくなる」聞き方
質問をされた側がきちんと答えているときは、聞き方が非常に重要で、質問力とセットで磨いていくべきスキルでしょう。
自分が話しているのに、相手がパソコンの画面ばかり見て記録をとっていたり、ただ情報を引き出されているような対話は、相手に不快感を与えてしまいます。
相槌のバリエーションや聞き方などは、工夫することで、相手に良い印象を与えることができるものです。
それにより、相手が心を開いて話がしたくなると、より対話を深めていきやすくなります。
「つい話したくなるような話の聞き方」について考えてみましょう。
相槌のタイミング
相槌は、下記の種類があります。
・うんうん、と声を出さずに頷くのみ
・声に出して相槌を打つ
・「そうだよね」「なるほどね」「そう考えていたんだね」など言葉をかける
これらは、必要に応じてバランスを調整することが必要で、声を出したり、言葉をかける相槌は相手の本音を引き出したい場面では、少なめにするのが良いでしょう。
何を話していても、話にかぶせるように「うんうん」と言われると、話をする側が一歩引いてしまいます。
基本的に、「まずはただただ自分の話を聞いてくれる人」に人は色々と話したくなるものす。
伝え返しの持つ意味
「〇〇と思っていたんですね」「●●という気持ちだったんですね」という伝え返しは、効果的な場面と、マイナスに働いてしまう場面があります。
例えば効果的な場面は、相手が話している途中で混乱してきて、少し思考の交通整理が必要なとき。
思いや考えの言語化をほんの少し手伝うことで、相手の頭の中もまとまっていき、「話してスッキリした」と思えるようになるでしょう。
注意点としては、相手の言葉をできるだけシンプルに、そのまま使うことです。
「〇〇という気持ちなんですね」の〇〇の部分を、こちらで勝手にアレンジしてしまうと、「そう言いたいわけじゃないのに」などすれ違いを生む可能性があります。
相槌で思考を整理する手伝いをする
質問して答えてもらう中で、相槌を工夫することで相手の思考の整理を手伝いましょう。
・意外だ、考えていなかった、という意味を伝える「へぇ~!」
・相手に同意を示す「そうですよね」
・自分の考えとは異なることを示す「うーん」
・知らなかったことを示す「そうだったんだ」
言葉や表情での相槌を工夫することで、こちらの反応を伝えることができます。
相手は、そのリアクションを見て「間違っていなかった」「これは自分の強みかもしれない」と話している間でも色々と考えます。
また、話を聞くときには「あなたに好意的です」ということを示す笑顔も忘れないようにしましょう。
意見を伝えるタイミング
どうしても意見を伝えなければいけない場面もあるかと思います。
その場合には、相手に一通り話をしてもらい、相手の思っていることや考えを明らかにした上で、必要があれば伝える内容を調整しましょう。
相手がまだしっかりと話せていない段階で、一方的に説明したり意見を伝えてしまうと、相手は本音を引っ込めてしまうことが多いです。
こちらの意見を伝えるのは、相手の話を最後まで聞いたあとで十分です。
まずは徹底した傾聴を心がけましょう。
まとめ
相手は自分をよく見て「この人に本音を話しても良いか?」を選択している
どんなにこちらが知りたくても、話す内容をコントロールするのは相手です。
日常的な関わりや仕事への姿勢など、相手も自分を観察して意思選択していることをわすれないようにしましょう。
「まだ」話せないときもある
質問されたが、考えや想いがまとまっていなくて、まだ話せない。
事情があって今は話せない。
タイミングの問題で、質問されてもはっきりとは答えられないこともあります。
何かを問いかけたときに、相手が答えにくそうにしている様子があったら、
「まとまってなくても良い」「今思うそのままを教えてくれれば良い」と回答のハードルを下げる一言を伝えてみて、それでも話しにくそうにしている場合は、
「また今度教えて」とあっさりと引き下がることも、時には大切です。
それにより、「無理に自分から情報を引き出そうとしている」という印象を与えるのを避け、「自分のペースに合わせてくれる人」という印象を与えることができます。
本音を話してもらえる人になるためにできること
質問力を磨くとともに、挨拶をはじめとする普段の立ち振舞い、姿勢、表情や相槌のバリエーションなどを見直してみましょう。
そうすると、質問に工夫をすることがより効果的になり、相手がだんだんと自分に色々話してくれるようになるはずです。