パルスアイは、従業員エンゲージメントサーベイ/組織診断サーベイと言われるWEBサービスに当たりますが、今回はパルスアイの開発コンセプトとして、何を重視してプロダクト開発を行っているかについてご説明したいと思います。

組織診断(→課題発見)の先を目指す

JSPでは、2009年から既に10年以上にわたって従業員エンゲージメント調査のサービスを提供してきました。基本的には、調査を主眼においたものではなく、経営アドバイザリーに主眼をおいたコンサルティングサービスという位置付けで行ってきました。

そのため「御社の課題は、〇〇と□□です」で終わるのではなく、「御社は、△△を変えるべきです」と解決策の提言まで行ってきました。時には、解決策の実行フェーズについても併走することで、会社の仕組みを変え、組織の状態を改善し、競争力を高めるということを実現してきました。こうした経験値を踏まえ、従業員エンゲージメント調査は、「組織の課題の発見」ができるだけなく、経営のPDCAに活用することで「組織力の強化/業績の向上」に寄与するという確信が、パルスアイの開発コンセプトの核になっています。

パルスアイの開発コンセプト

 パルスアイの開発コンセプトは、次の3つです。

  1. 組織の課題も、個人の課題も、両方を定量的に把握できる
  2. エンゲージメント向上&退職率低下を通して業績向上につなげられる
  3. AIを活用することで、人による分析では得難いインサイト(示唆)を得られる

1. 組織と個人の課題を定量的に把握できる

組織診断サーベイとしては、組織の課題発見は必ず保有すべき機能ですが、パルスアイは、従業員個々人の課題も把握することができます。そのために、実名で聞く質問と、匿名で聞く質問に分けています。パルスアイは、一言でいうと、「多角的・多面的な課題発見ができる診断ツール」を目指しており、組織のマクロの視点でも課題把握できるし、個人のミクロの視点でも課題把握できるという使い勝手の良い分析機能の実装を重視しています。

まず、組織の課題は、3つの視点で捉えることができます。①課題の全体像(部署別比較)、②時系列変化(トレンド推移)、③課題の特定(項目別詳細)の3つです。

①課題の全体像(部署別比較)

全社と各部署のカテゴリースコアの一覧を把握することで、どの部署のどのスコアが高く、どの部署のどのスコアが低いか把握できます。これにより、組織運営面において、テコ入れする必要のある部署の特定や、何が課題なのかを知ることができます。

②時系列変化(トレンド推移)

全てのカテゴリースコア、アイテムスコアについて、過去12ヶ月のトレンド変化を把握することができます。このトレンドを見ることで、組織の状態が上向いているのか、悪化しているのかを把握できます。

③課題の特定(項目別詳細)

全アイテムの重要度と満足度をプロットしたESマトリクスを見ることで、自社の課題項目を把握することができます。

個人コンディションの把握

次に、個人の課題ですが、毎月のアンケート結果から、退職リスクのある従業員の把握ができます。

また、現在開発中ですが、個人コンディションの詳細分析機能を8月〜9月にかけてリリース予定です。この機能は、従業員ごとの個別のコンディション状況を上司が的確に把握することで、1on1や日々のコミュニケーションの中で、成長支援やモチベーション管理に活用していただくことを想定しています。

2. エンゲージメント向上&退職率低下を通して業績向上につなげられる

人間が毎年健康診断をして、健康上の問題がないかどうかをチェックするように、法人組織も定期的に組織診断を行って、組織運営上の課題が何かを把握することには一定の意味があると思います。

しかしながら、経営者視点に立つと、本質的に求めているのは、企業の成長であり、業績の向上です。課題が把握できるだけでは、価値がない訳ではないものの、なくてはならない最高のプロダクトとは言えないでしょう。

パルスアイを導入すると、「自社の課題が手にとるように分かるだけでなく、自社の業績向上に役立つ」というのが、パルスアイが目指すプロダクトとしての提供価値です。自社の業績向上に寄与している実感を得るためには、業績向上に影響を持つスコアの算出が必要であるという考えのもと、「カテゴリースコア」という概念をつくりました。

カテゴリースコアとは、個別質問の結果をスコア化したアイテムスコアから、AI(機械学習)で作成したモデルを用いて算出したものです。

例えば、エンゲージメントとは、従業員が所属組織の成功に対して主体的に関与していきたいという心理的なロイヤリティ(帰属意識/貢献意欲)を意味しますが、本来は、心理的な状態を指すので、目に見えないですし、どの程度なのか把握できないものです。それを、エンゲージメントスコアとして、関連するアイテムスコアを組み合わせることで、エンゲージメントスコアとして定量化しているのです。

エンゲージメントスコアとして、従業員のエンゲージメントを定量化できれば、PDCAを回せるようになります。PDCAが回れば、実現したいのは下記のサイクルです。

エンゲージメントスコアの把握 → エンゲージメント改善の課題の把握 → エンゲージメント改善に向けた取組みの実施 → エンゲージメントスコアの改善 → 業績の向上 → エンゲージメント改善が業績向上に寄与することの実感 → エンゲージメントスコア改善に向けたさらなる取り組み→ エンゲージメントスコアの改善 → 業績の向上 ・・・

これが実現できると、「エンゲージメント向上&退職率低下を通して業績向上につなげられ」状態といえ、パルスアイを使い続けていただけるに値する十分な価値提供ができると考えています。

3. AIを活用することで、人による分析では得難いインサイト(示唆)を得られる

AI技術の進化は目覚ましく、画像認識や機械翻訳の領域では、既に人の能力と同等、もしくは、それ以上の精度を出すことに成功しています。データ分析の領域においても、複数の因子(説明変数)と、ターゲット(目的変数)との間の関係性を回帰モデルを使った予測モデルを構築することが可能になっています。こうしたAI(機械学習)を活用した分析モデルは、人の手(と頭)で行う通常の分析では得難い結果を高精度で得ることができることが特徴です。

パルスアイにおいても、AIを積極的に活用することで、人が行う分析ではなかなか得られないインサイトを簡単に得られることを開発コンセプトの1つにおきました。

例えば、パルスアイでは従業員個別の退職リスクを判定していますが、これは構造化データに基づいた最先端の機械学習モデルを実装したGoogle Cloud AutoMLを利用し、独自のアルゴリズムを構築することで、リスク判定しています。

退職リスク判定のロジックについては、別途説明していきたいと思いますが、簡単に言うと、毎月聞く4つの質問(仕事内容・パフォーマンス・職場の人間関係・健康(十分な睡眠))の結果から、それぞれアイテムスコアが与える退職意向への影響度を加味して、退職リスクを4段階(高・中・低・なし)で判定しています。

将来的には、退職リスクの予測モデルをさらに高度化して、4段階でのリスク評価から、%でのリスク評価(例:退職リスク73%)に改善したいと考えています。