メタバースは仮想通貨やNFTなどと同様に「Web3時代」を代表する、新しいテクノロジーのひとつです。
Facebook社が「Meta」に社名を変えたように、メタバースは今、世界中から注目されています。
メタバースプラットフォームも次々に登場しており、日本でも少しずつ知名度が上がってきていますが、「名前は知っているけどやったことがない」「よくわからないものに手を出すのは怖い」と思っている人も多いのではないでしょうか。
メタバースは個人が楽しめるのはもちろんのこと、企業の新事業としても成長が見込めます。
この記事では多くの企業が頭を悩ませている「離職率の改善」と「定着率の向上」でメタバースは何ができるのかを解説します。
この記事を最後まで読んでいただくと、メタバースの可能性を理解し、すぐに自社に取り入れたいと感じてもらえるはずです。
メタバースで働き方が変わる
2020年以降、社会情勢に大きな変化がありました。
在宅勤務増加によるテレワークの普及です。
それまでもテレワークという概念はありましたが、ごく一部の社員だけが使うものであり、基本は勤務先まで通勤するのが当然という考え方が普通でした。
しかしその通勤が困難になる事態となったことにより、このままでは仕事がストップしてしまうと危機感を抱いた企業が「ZOOM」や「Teams」などのリモート会議ツールを導入し、SaaSなどのクラウド上で仕事を進められるツールを使ってオフィス以外でも仕事ができるようにしました。
これらと同様に、仕事のあり方を変える新しいテクノロジーが「メタバース」です。
実は2000年代にも「セカンドライフ」という、ほぼメタバースと同じようなものは登場していました。
しかし当時、今ほどネット回線の速度やパソコンのスペックは発達しておらず、動きは非常に遅いものであったため、とても仕事に使えるものではありませんでした。
しかし近年はさまざまな端末が高スペックで登場しており、ネットワークでストレスを感じることもほぼなくなっています。
今後はメタバース上で自分のアバターを用いてバーチャル会議室で打ち合わせをしたり、バーチャルオフィスで仲間とコミュニケーションをとったりするといったことが普通になることでしょう。
テレワークの会議のあり方
テレワークの会議も少しずつメタバースに置き換わっていくことでしょう。
ZOOMなどのリモート会議ツールは大変便利で、世界中どこにいても参加できます。
しかし対面での会議と違って話すタイミングがわかりづらかったり、身振り手振りが見えなかったりと、何度ももどかしい思いをした方も多いのではないでしょうか。
メタバースでの会議であれば、アバターとはいえ、バーチャル上で対面での会議ができます。
「Meta」社は他社に先行して2022年8月、新サービス「Horizon Workrooms」を立ち上げました。
Metaが販売している「Oculus Quest 2」を使ってバーチャル会議室で行う会議は、リアルで会うのとほとんど変わらない感じで話し合いができます。
身振り手振りはもちろんのこと、話している相手の方向から声が聞こえてくるため、リモート会議ツールでの話し合いとは比べものになりません。
時間差もほとんど感じませんので、ストレスを感じることなく会議ができます。
メタバースによってまるで実際に会って話しているかのような会議が実現でき、スムーズで活発な話し合いができることでしょう。
顧客との接し方
メタバースでの顧客の接し方で最も適しているのが、アパレル業界です。
アパレルの場合、接客をメタバースで完結させることができます。
例えばデザインはメタバース上で見せられますし、自分のアバターで試着してみれば、似合うかどうか確認可能です。
実際に多くのアパレルブランドがメタバースに参入してきており、効率の良い広告宣伝に使ってるケースが見られます。
例えば「ユニクロ」はメタバースゲームのひとつ「マインクラフト」でゲーム内で着用できる衣装を無料配信しました。
このコラボTシャツは実際にリアル店舗でも購入可能です。
だれもが知る大手企業のユニクロがメタバースに進出してきたことは、他の日本企業にも少なからず衝撃を与えたことでしょう。
B to Bの場合はどうでしょうか。
どんなに遠くいる相手でも、メタバースなら同じ空間を共有できるため、リアルで訪問する必要がなくなります。
営業できる商品は限られるかもしれませんが、ZOOMなどよりも相手と話がしやすいはずです。
メタバースによるコミュニケーション強化
テレワークが増えたことにより、同じ部署にいても接する機会が減っています。
1ヶ月以上顔を合わせていないといったことも珍しくありません。
飲み会の開催も激減し、密なコミュニケーションができなくなってきています。
そこで新しいコミュニケーションとして、メタバースを利用してはどうでしょうか。
アバターとはいえ、同じ空間を一緒にし、至近距離で会話ができます。
「フォートナイト」や「あつまれどうぶつの森」などのメタバースに近いゲームをやったことがある方なら、そのようなコミュニケーションがどれほど楽しく、親密になれるか理解しやすいことでしょう。
メタバースは新しいコミニュケーションを提供してくれるものとして、世界中の個人、企業に広がっていくと期待できます。
仕事の幅を広げられる
メタバースを利用して、いつでもどこでも仕事ができる体制を整えていきましょう。
現状のメタバースはプラットフォーム上でできる内容に限りがありますので、すべての仕事をまかなえるわけではありません。
しかし、これから確実にメタバースでできることが増えていきます。
できる仕事の幅が広がれば、世界中どこに住んでいても、ネットワークにつながっている端末ひとつでさまざまな仕事ができるようになります。
離職率が上がったり、なかなか定着しない理由のひとつが、希望しないところへの異動です。
家庭の事情で親元から離れられなかったり、マイホームがあるのに遠方への異動のため単身赴任になったりと、従来の日本の人事システムは企業主導で、従業員の状況や思いは軽くみられがちでした。
メタバース上で仕事をする体制が定着すると、部署の異動はあっても、住む場所を移る必要がなくなります。
ずっと同じ部署だったとしても、どこで働いても同じなのですから、より都市部に住みたいとか、もっと静かな田舎で暮らしたいとかいう希望も叶いやすいのです。
プライベートの満足度を上げることは離職率改善と定着率向上に欠かせません。
メタバースでの仕事をメインにすることで、従業員の満足度はきっと上がることでしょう。
Z世代を取り込みやすい
メタバースはZ世代にも受け入れやすいプラットフォームです。
ミレニアム世代はインターネットが普及し始めた頃を知っているため、メタバースへの抵抗は低いとみられますが、Z世代は物心ついたときからインターネットにつながっている世界が当たり前という考えをもっています。
LINEやTwitterなどのSNSは最初からありますし、YouTubeやTikTokで一般人が登場することに何の違和感ももっていません。
また、PCゲームはもちろん、家庭用ゲーム機やスマホゲームなどもインターネットでつながっている相手との対戦を普通に行っています。
そんなZ世代ですから、メタバースでの仕事をすることもほとんど違和感もなく受け入れることでしょう。
従来の仕事に古さを感じ、就職してもすぐにやめていくZ世代は少なくありません。
特に日本では少子化により、業界関係なく若者人材の争奪戦となっています。
「PwC Japan」はクラスターが運営するメタバースプラットフォーム「cluster」を活用して、独自に制作したメタバース空間で500人規模の入社式を行いました。
新入社員はアバターを操作して拍手やジャンプをするなどのリアクションで入社式を盛り上げ、リアルでなくても一体感のある入社式を実現しています。
メタバースでの新しい働き方を提供することで、Z世代を引き込むことができる可能性があります。
メタバース導入で注意すべきこと
メタバースはとても魅力的ですが、注意すべき点もあります。
メタバースではリアル世界でどれだけ離れていてもコミュニケーションがとれる、非常に便利なプラットフォームですが、それによってメタバースで過ごす時間が多くなり、リアルでのコミュニケーションが不足するという点です。
リアルで対面するときに感じられるものが、メタバースにはないものもあります。
メタバースがメインとなった場合、メタバース上ではアバターを使っていますので、多かれ少なかれ、別の人物を装っていることになるため、リアルで会うことに抵抗がある人も増えるかもしれません。
また、メタバースには「没入感」があるため、オンラインゲームなどにみられる「依存症」に陥る可能性があることも懸念されます。
メタバース依存症になると、いつもメタバースにいることが普通となるため、リアルに出てこれない事態となる恐れがあります。
メタバースですべて完結するような未来はまだまだ先の話です。
有識者の間でもメタバースとリアルは共存するものであるとするのが一般的な意見となっていますので、どちらか一方に偏るのはよくありません。
企業は従業員がメタバースに対してどういうスタンスで仕事をしているか、常に気にしておくことが必要になるでしょう。
まとめ
ここまでメタバースが働き方を変えるというテーマについて解説してきました。
メタバース上での決済は仮想通貨であったり、VRゴーグルなどの機器が必要になったりと、実際に企業が本格導入するにはまだまだ検討すべきことがたくさんあります。
とはいえ、どの企業も若者の離職率と定着率に悩まされていることは事実ですので、新しい働き方を確実に進める必要があります。
特に働く場所に制限がほとんどない業種であれば、経営陣がリーダーシップを発揮して進めるべきです。
メタバースにより早くアプローチすることで、マスメディアが話題にしてくれる可能性もあります。
そうなりますと、宣伝効果も抜群ですので、ほしかった人材を獲得できるかもしれません。
メタバースはまだ手探りな面もありますが、情報を集めて自社にチームをつくり、積極的に進めていきましょう。