現在の日本では、熱意あふれる社員が「6%」しかいないという衝撃的な調査結果が出ています。
この調査は2017年の米ギャラップ社によるもので、国別のランキングに表すと139ヶ国中132位という結果となりました。
企業が熱意あふれる社員を増やすためには「従業員エンゲージメント」を高めるしかありません。
そこで近年、コロナ禍による影響や急速なDX化の浸透により、多数の企業から注目を浴びているのが「メタバース」を活用した従業員エンゲージメントの向上です。
この記事では「メタバース」に焦点を当てた従業員エンゲージメントの高め方をご紹介します。
実際に導入した企業の成功例なども紹介しているので、ぜひご参考にしてください。
従業員エンゲージメントとは
そもそも従業員エンゲージメントとは、従業員が会社に対して「貢献したい」と思う意欲のことです。「engagement(エンゲージメント)」は「契約」という意味なので、企業と従業員との結びつきの強さを表す言葉になります。
しかし、従業員エンゲージメントの定義は企業ごとに異なり、自社独自の基準を設けなければ従業員エンゲージメントを測ることは困難です。
従業員エンゲージメントを高めるためには、企業と従業員との信頼性や共感性などの要素が重要となってきます。
従業員エンゲージメントを高めることにより、従業員一人一人が企業に対して前向きな姿勢になり、企業全体の生産性や効率性を高め、業績の向上をはかれます。
従業員エンゲージメントを向上させる「メタバース」とは
メタバースとは
メタバースとは、ネット上に構成された3次元の仮想空間を指します。「超越」を表す「meta(メタ)」と「世界」を表す「universe(ユニバース)」を合わせた造語になります。
元々メタバースという概念は2003年ごろから認知され始め、近年「フォートナイト」などのリアルの世界とリンクさせたゲームが続々とで始めたことによって、メタバースが再認知されました。
このメタバースに対して積極的に取り組んでいる代表的な企業が「Meta(旧:Facebook)」であり、2021年には「Horizon Workrooms」というバーチャルオフィスサービスの内容を公開し、話題を呼びました。
サービス内では空間オーディオによって臨場感ある音を実現し、お互いの表情やしぐさなども詳細に認識できます。
このようなサービスを出す企業は今後続々と増えていくと予想され、これからはリアルではなくメタバースの会社に出社し、リアルと同じようなコミュニケーションを社員と行えるようになるでしょう。
メタバースが従業員エンゲージメントを高める理由
メタバースが従業員エンゲージメントを高める理由は、メタバースが「コミュニケーションの拡張」と「非現実的な体験」を可能としたからです。
もしメタバースでのコミュニケーションが問題なく行われたとしたら、国境や時間に縛られずに多種多様な人と交流することができます。
さらに、メタバースでは現実ではありえないような体験ができるため、今まで時間やお金がなくてできなかったことや物理的に不可能なことができてしまうのです。
これらのことから、メタバースをビジネスで活用することによって、リアルではなかった従業員同士の交流や従業員への新しい報酬が可能となります。
「メタバース」を活用して従業員エンゲージメントを高めるには
適材適所に人材を配置する
従業員が自分の力が会社の役に立っている、貢献できていると感じられれば、業務へのモチベーションは高まります。そのためには、従業員には適性に合った業務を任せる必要があります。
適材適所を実現させるためには、1on1ミーティングで相互理解を深める取り組みや継続的な従業員サーベイで従業員の状態を把握する方法があります。
ここでメタバースを活用すれば、従業員の感情や能力を知るためのリアル擬似テストを行うことができるかもしれません。
例えば、従業員が希望する業務をメタバース上で体験してもらい、その時の感情や成果から従業員と業務のマッチングをはかることができるでしょう。
ワークライフバランスを改善する
残業時間が長く、休日出勤が続いていると従業員は心身ともに疲労していき、企業への信頼も下がります。そのような企業ではまず第一にワークライフバランスの改善を考える必要があるでしょう。
例えば、「フレックスタイム制度」で従業員に勤務時間を決めてもらったり、「ノー残業デー」などの残業をしない曜日を作る方法があります。
しかし、このような制度を実現することが業務的に難しい場合もあるかと思います。例えばそれは営業や現場作業などがあげられます。
そこでメタバースを導入することができれば、例えば営業ではメタバース空間でサービスを実体験してもらうものにして、売上と効率を上げられるかもしれません。
現場作業ではメタバース上で質の高いシミュレーションを行い、現場の無駄な作業をなくせば、生産性を高められる可能性があります。
「業務が多いから」と諦めずに、少しの工夫や技術の導入をすれば、充分な休息をとる余裕が生まれるでしょう。
インセンティブを整える
働いてどれだけ成果を上げても正当に評価や報酬が得られなければ、どんな人でもやる気が失せてしまいます。
正当な評価をするためには定期的な面談や表彰の場を設けたり、成果までのプロセスも評価基準に加える必要があります。
ここでの面談や表彰の場もメタバースで行えば、オンライン面談よりも寄り添った話し合いや、現実では不可能な盛大な表彰を行えるかもしれません。
インセンティブの形もメタバースを活用すれば、キャッシュではなくNFTなどの仮想の貨幣に代わってくるかもしれません。
コミュニケーションを活発にする
社内でのコミュニケーションが上手く取れていないと、従業員は組織に親しみを感じられません。
コミュニケーションを充実させるためには、ランチミーティングを行ったり、フリーアドレス制を設けてさまざまな人と交流できるようなアプローチがあります。
近年、このコミュニケーション活性化によく使われている媒体こそ「メタバース」です。
現在のメタバース空間が可能とすることは「オンラインなのにリアルのような感覚」です。
特にコロナの影響でオンライン上での業務が増えている今、メタバースの力を借りて、従業員の交流機会を増やす企業が増えてきています。
ビジョンや文化への理解を高める
自分の考えや思いが企業の価値観やビジョンと一致していれば、仕事に対しての想いも強くなります。
ビジョンや文化への理解を高めるには、従業員に明確に示し浸透させる必要があります。
そのためには「キックオフミーティング」でプロジェクトの目的や方法を明確にしたり、「ブランドブック」で企業の目指す理想を従業員に伝える方法があります。
企業理解に関しても、コミュニケーション同様にメタバースを活用している企業が多いです。
リアルでもオンラインツールでも難しい「3D空間全体を使ったプレゼン」や「自由な空間の移動」など、非現実な体験によって企業が伝えたいことを従業員の記憶に残すことができます。
成長を実感する機会を増やす
成長を感じると人は「楽しい」という感情がわきます。なので、仕事でも同じように成長を実感できるような何かを用意すると良いでしょう。
従業員が自ら用意しても良いですが、会社が成長機会を増やすことで従業員からの信頼が高まりやすいです。
例えば、従業員が自身のキャリア設計するための「キャリアデザイン研修」や新入社員、中堅社員、管理職など階層別に研修を用意する方法があります。
ここでの研修でもメタバースでのリアルな疑似体験を行えば、上司の評価は的確なものとなり、評価が的確であれば成長に何が必要か自然と見えてきます。
快適な社内環境を提供する
職場の環境や福利厚生が充実していると、ギブアンドテイクの精神で、従業員は仕事で成果を上げようとします。
まずはオフィスを綺麗にすることから始めましょう。社内にカフェやくつろぎスペースがあると心身のリフレッシュができます。
他には旅行チケットや長期休暇を用意して、社外で気分転換してもらうのも良いでしょう。
さらに、社内環境をリアルとメタバース空間で併用すれば、リアルの社内環境に対して不満は減ることでしょう。
しかし、それだと根本的な解決にはならないので社内環境を整えつつ、メタバースに代替できるものがないか模索すると良いかもしれません。
メタバースを活用した成功事例
株式会社ブイキューブ
株式会社ブイキューブでは、「3DCGの仮想空間」を活用した年始キックオフ・表彰式が行われました。
メタバース空間の中でリアルと同じリッチ感を演出し、参加者は自由な空間の移動や多様なプレゼンテーションなど、リアルでは味わえないような大規模なイベントに成功しました。
メタバース導入の背景としては、ブイキューブが自社で行ったビジネスイベントのオンライン化に関する調査結果から、オンラインイベントはコロナ収束後も行いたいが、双方向型のイベントや参加者同士の交流が特に求められているとわかったことがきっかけです。
そこで今までのオンラインイベントにはなかった特別感や感動を目指し、メタバースが活用されました。
結果としてライブイベントのような臨場感を体験することができ、参加者の満足度は過去最高値となりました。
PwCコンサルティング合同会社
PwCコンサルティング合同会社では、「社員を対象としたメタバース実証実験」を行われました。
この実験はイベント形式で行われ、イベントでは施策を伝える「講演」系とお笑いや音楽などの「エンターテインメント」系に分かれ、全23個のプログラムが行われました。
メタバース導入の背景としては、PwCコンサルティングとHR総研が共同で行った調査から、コロナ禍での社員同士のコミュニケーションや組織の一体感が今後の課題として見えていたことがきっかけです。
そこで、一つの試みとしてメタバースを活用したイベントを企画・開催することで、また新しい気づきが得られると考え、実証実験が行われることになりました。
結果として、VRゴーグルでの参加者の約96%が「次回も参加したい」と回答し、従業員が社内戦略を理解するにはメタバースの方が有効であることもわかりました。
しかし、VR酔いや機器のセットアップなどに対しネガティブなイメージが強く、今後の課題となっているそうです。
株式会社Number
ITコンサルティング事業を行っている株式会社Numberでは、全社朝礼と社内ミーティングをメタバースで統一して行われています。
VR機器「Meta Quest2」とVRサービス「Workrooms」が全社員に配布され、全ての社内会議がメタバース空間で実施されます。
メタバース導入の背景としては、もともと使っていたGoogle MeetやZoomなどのツールだと相手との距離感が掴めなく、IT事業を行っている会社だからこそ、積極的にDX化を行っていこうと考えたことがきっかけです。
そこで、実際に会っているような感覚でコミュニケーションを取る手段としてメタバースが導入されました。
結果として、社員から「メンバーと会っている感じがする」という声が出てきて、VR上にディスプレイを持ち込める機能によって抵抗感もなく会議が行えているそうです。
しかし、VR機器は体への負荷やバッテリー切れなどのデメリットから長時間利用するのに向いていないため、今後の進化に期待を寄せています。
まとめ
メタバースの活用によって、今までにはなかった新しい視点で「従業員エンゲージメント」と向き合うことができます。
現状、メタバースが実現できる可能性の高い効果は「コミュニケーションの活発化」と「ビジョンや文化への理解」となります。
他の効果に関しても、今後メタバースの技術が進めば実現は夢ではありません。
いずれにしても、メタバースは新しい技術であるため導入は少し挑戦的かもしれませんが、時代の流れから今後は視野に入れるべき技術になるでしょう。