メンタルヘルス不調などによる、突然の離職を予防できる職場の環境とはどのようなものでしょうか、私自身、看護師として数カ所の病院や病棟で従業員として働いて学んできた点が多くありますまだまだ、より良いチームをつくるために試行錯誤中ですが、皆様に今日からできる離職を予防するためのメンタルヘルスケアの方法の一部をお伝えしたいと思います。

職場における心理的安全性が課題になる理由

会社組織の特徴や注意点について整理していきます。

職場の安全性の難しさ

なぜ、会社における心理的安全性は課題になるのでしょうか。それは、仲良しのグループと会社の違いにあると言えます。会社では、成果を出す必要があり、成果に基づいて評価をされることも多い状況があります。

会社である以上、当たり前のことでありますが、成果を出さなければならないといった理由から、緊張が生じやすい環境であることを理解することが大切です。

特に、若く経験の浅い従業員のメンタルヘルスの不調が多いことは、このことが原因の一つです。経験値の高い従業員は、様々な場面において自信があったり、相談できたりと対処行動をとることができます。

また、経験値の高い従業員は、新人職員のこのような気持ちに気づきにくいといったことも考えられます。まず、メンタルヘルス不調などによる突然の離職を防ぐためには、このような職場の心理的安全性の特徴についての理解が重要になります。

困難な事態と心理的安全性

私が看護師として勤務する上で感じた点に、トラブルが発生したときのその場の雰囲気の重要性があります。

困難な事態が生じた時のその場の雰囲気が暗くなるようでは、チームメンバーがうまく作用しあえず、生産性も低い状況ではないでしょうか。

逆に、失敗した時に結束しチームでフォローする姿勢が積極的に見られると、チームがうまく機能しているという感じがします。

トラブルは必ず発生するものですが、その際に従業員が前向きに解決に向かう姿があると、その場に安心感を感じます。そのため、チームが困難な事態に陥った時にどのような雰囲気になるか、特に注意して観察するようにしています。そのうえで、リーダーはまず率先して、失敗を攻めるのではなく、解決に協力する姿勢をみせることが重要と考えます。

何か自分がミスをしても必ず周囲が協力してフォローをしてくれるという安心感は信頼関係にとって重要です。従業員の能力を信じつつ、必要な解決に向かうことができるように支えていけるよう努力しています。

また、会社として従業員の能力を信じ、それぞれを大切に思っていることを発信するのも重要と考えます。

ヤフーにおける人財開発

従業員の能力に焦点をあて、メンタルヘルスを含む従業員の健康への取り組みを行っている会社の例にヤフー株式会社を紹介します。

ヤフーにおける従業員の健康管理は様々な計画がされて実施されています。健康経営優良法人2022に認定され、6年間の連続認定となっています。

具体的な取り組み

取り組みとして、ラインケアセミナー、セルフケアセミナー、マインドフルネス講座、外部講師によるストレスケアセミナーなど多くのセミナーがあります。その中には、勤務時間中の雑談や懇親会の推奨といったものがあり、社員食堂が協力し、ランチ会セットが利用できます。

また、1on1ミーティングが義務として行われ、記録も残り、継続して従業員の才能の開発に焦点が当てられます。ヤフーはこのミーティングをトップが中心に取り組む仕事として位置づけ、実践しています。

1on1ミーティングは一般的な面接とは異なり、コーチングとフィードバックにより従業員の気づきを促し、成長へつなげるものです。コーチングについて、社内で独自の研修制度があり、管理職の従業員は皆さん受講されています。

フィードバックについては、日本人は苦手な傾向があり、なかなか成長の機会に出会わないということもあるようです。しかし、ヤフーではフィードバックをマイナス面の指摘のみとせず、従業員の気づきになるような声掛けも含めて定義しています。

例えば、「〇〇さんについてお話している時に、必ず腕組みをするね」といった様子を伝え、「実は〜〜〜なところがあって、苦手なんです。」といった言語化が促されます。そして、その課題についての思いをより深く傾聴していくことができるようです。

1on1ミーティングは、従業員個人のための時間として設定されています。なので、対象者が「話しができて良かった」という感覚になれることも大切です。その結果、信頼関係が育まれ、「なにを言っても大丈夫」「使えないアイデアでも一部が何かの役に立つかもしれない」といったことが社内に雰囲気として醸成されるようです。

ヤフーの人財開発が目指す目標

従業員の経験学習を促進させ、学ぶことを助けることを目標に、日々の経験的学びを新しい事に活かしていくことを目指されています。

従業員の才能と情熱を解き放つことを目指せるための支援することを目的とされています。

心理的安全性がある職場の具体的な特徴とは

さらに職場の心理的安全性の特徴について整理します。

ニューヨーク・タイムズのベストセラー作家であるダニエル・コイルの著書「最強のチームをつくる方法」のなかから心理的安全性がある職場の特徴を引用します。

  • 物理的な距離が近くよく輪になっている
  • 穏やかな態度で緊張を和ませる人物がいる
  • 相手の話を熱心に聞く
  • 家族のようなつながりがある
  • 人の話を遮らない
  • ユーモアと笑いがある
  • アイコンタクトがある
  • 会話に活気があり短い言葉のやり取りが多い
  • チーム内の交流が盛ん
  • メンバー全員と交流がある
  • ありがとうといったちょっとした礼儀や暖かさを大切にする
  • メンバーがリラックスしている

以上のような特徴が、共通して見られる特徴とのことです。

アメリカと日本ではコミュニケーションの文化の違いはあるものの、上記の特徴を知ることは役に立つことがあります。例えば、人の話をさえぎらないといったことはすぐにでも実践することが出来る内容ではないでしょうか。

具体的に取り組むべきこと

これまで整理してきたことをふまえて、チームや組織をつくる上で重要ですぐに行えることを考えてみます。

日々の仕事で

まず礼儀正しくといった基本的なことが、従業員を尊重し大切にしていることの表現になりうると考えます。穏やかな態度で礼儀正しく接していただけると、安心感を与えます。その上で、話をよく聞くことも十分にケアとして考えられます。

従業員が気軽に声を掛け合えるような環境ができれば、悩んでいる従業員が相談をしやすくなるといえます。

役員などの立場からできること

まずは、困難な事態にも前向きに対処を引き受ける姿勢が必要です。その上で、分け隔てることなく従業員に期待することを伝えていきましょう。

個々の従業員の能力をさらに発揮していただくために、会社が期待する高いレベルの目標のことなどを伝えていくことが必要です。

人事としてできること

まず、丁寧な面接とその記録が大切と考えます。個別的な指導も内容を記録しておくことをおすすめします。そのうえで、適材適所となるような異動などの工夫ができるかなど検討されることとなります。

パスルアイのストレスチェック

ストレスチェックの実施と運用についても効果的に機能することが重要と考えます。パルスアイの仕組みは効果的に従業員の状態を知ることができるツールであると考えています。

パルスアイのストレスチェックでは、従業員マイページからそれぞれが結果を確認するこが可能です。このことにより、従業員のセルフケア意識への働きかけも、紙面で配布されるよりも身近に感じられます。

全国平均や業種平均では、社外との比較が可能です。また、集団分析の機能もあり、従業員ごとの特性のみでなく、社内の部署ごとにストレス因子について分析することが可能です。

まとめ

離職予防のためのメンタルヘルスケアというと、難解そうな印象をあたえますが、穏やかで礼儀正しいといった基本的に皆さんが備えられているであろうささいな事に注意していくことで従業員の心理的安全性を支援することになることを確認しました。これなら、今日から実践されることが可能と思います。また、多忙な日々、ご自身のケアも忘れずにお過ごしください。

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