「Salesforceって最近よく聞くけど、なんで伸びているんだろう?」
「Salesforceは従業員エンゲージメントについての記事もたくさん出してる。Salesforceの成長に関係しているのかな」
従業員エンゲージメントについて調べていると、Salesforceの記事にたどり着く方も多いでしょう。
Salesforceは、Great Place to Work(R) Instituteの発表する働きがいのあるグローバル企業ランキング1位に選出されるなど、HR領域でも大変注目を集めている企業です。
また、Salesforceは創業以来、売上20%以上の成長を継続しており、その一因として従業員エンゲージメントを取り上げています。一方で、具体的にSalesforceがどんな施策をとっているのか知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回はSalesforceの従業員エンゲージメントについてご紹介します。
Salesforceが従業員エンゲージメントに力をいれる理由
Salesforce従業員エンゲージメントに力をいれる理由は主に以下の3つといえます。
- Salesforceの理念「Ohana」につながるから
- 従業員エンゲージメントが売上につながるから
- より効率的な組織を作ることができるから
それぞれ細かく解説していきます。
Salesforceの理念「Ohana」につながるから
Ohanaとはハワイ語で家族という意味で、Salesforceでは、従業員のみならず関係者全員が家族のように助け合う組織を理想としています。
これは単純に助け合うということだけでなく、相互に信頼し、共に成長していく関係を築いていく事を意味しています。
このOhanaの考え方が、従業員エンゲージメントを強化する経営方針の源泉となっているわけです。
Ohanaの考え方をもう少し掘り下げてみましょう。
Ohanaを基軸として、Salesforceでは以下の4つの価値観を重要視しています。
- 信頼
- Customer Success
- Innovation
- 平等
これら4つの価値観を追求することで、Salesforceは顧客、パートナー、そして従業員との関係性を継続的に向上し続けることに成功しているといいます。
それでは、4つの価値観が従業員エンゲージメントにおいてどのような位置付けにあるかみてみましょう。
【信頼】
Salesforceは、従業員に対してオープンに情報を開示していくことで、会社と従業員との信頼関係を築いています。
そのため、社内SNSなどで風通しの良いコミュニケーションを行い、情報を積極的に流通させてるなど会社としての工夫が見受けられます。
【カスタマーサクセス】
カスタマーサクセスの価値観は、会社から従業員への成功にも見受けられます。
Salesforceの人事部門に該当する組織は「Employee Success」と名付け、従業員の個人的な成功を実現するために労力を惜しみません。そのため、ワークライフバランスを保つために可能な限り業務を効率化する、従業員の家族との触れ合いができるイベントを開催するなど施策を展開しています。
【イノベーション】
世界で最も革新的な企業にも度々選ばれているSalesforceですが自社のテクノロジーは従業員の働き方にもイノベーションを起こしています。
従業員の業務効率化や、より違和感のないリモートワーク環境の実現を図るために自社製品を徹底的に活用し、パフォーマンスと個人的幸福を同時に追求しているわけです。
【平等】
どの従業員にも平等に接するため、Salesforeでは360度評価の実施やキャリアパスの明確化で公平な労働条件を提供しています。
また、人種や性的差別を排除し多様な価値観を受け入れる文化を醸成するため、様々なイベントを開催しているといいます。
このように4つの価値観を通じて多くの施策につなげていくことで、Salesforceの従業員は高いパフォーマンスを発揮し続けているわけです。更に、会社が好きになり離職率も低下する好循環が生まれていることがわかります。
まとめると、Ohanaの実現が高い成長率を発揮するSalesforceの土台となるため、従業員エンゲージメントに力を入れていることがみてとれるでしょう。
従業員エンゲージメントが売上につながるから
Salesforceは、従業員エンゲージメントを強化することが売上や収益の成長につながっていると理解しており、重点的に強化しているようです。
売上と従業員エンゲージメントにおける関連性は、Salesforceの運営する学習サイト「Trailhead」の中でも、以下のように触れています。
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- 従業員のエンゲージメント = 顧客の満足 = 株主の満足 = ビジネスの成功
- 『Employee Engagement 2.0』(従業員エンゲージメント 2.0) の著者である Kevin Kruse は、エンゲージメントと顧客サービス、維持、満足、ロイヤルティ、生産性、成長、利益には相関性があることを証明
- エンゲージメントの高い従業員のいる組織は、エンゲージメントで劣る従業員のいる組織に比べ、2 倍の収益を達成
- 従業員エンゲージメントスコアが高い会社は、平均的な従業員エンゲージメントレベルの会社に比べ、顧客ロイヤルティ (リピート購入、友人へのおすすめ) が 2 倍
- エンゲージメントレベルが上位 25% の企業の利益率は、下位 25% の企業を平均 12% 上回る
引用:Trailhead
実際のSalesforceの成長率は、創業以来売上20%以上を維持しており、一方で従業員満足度なども高い数値を出しつづけています。
Salesforce自身が、従業員エンゲージメントの重要性を理解しているからこその継続的な結果の創出ができているとみることもできるでしょう。
効率的な組織を作ることができるから
Salesforceは自社の製品を活用して従業員のワークスタイルを改善したり業務を効率化することで従業員エンゲージメントを強化しているといいます。
他社がIT投資を後回しにするような領域でも、積極的にIT化を進めることで、働きやすい環境を整備でき、従業員エンゲージメント高めることに成功しているわけです。
その結果として、社員の仕事スピードも上がって成果も出る上に、自社製品の進化にもつながって競争力を高めています。
例えば、Salesforceでは、従業員向けの問い合わせアプリ「コンシェルジュ」を使ってバックオフィスへの問合せ対応を仕組み化しています。
コンシェルジュとは、Salesforceベースで作られた社内ヘルプデスクのような仕組みで、以下のような機能が配置されています。
- FAQから社内手続き全てを一括で検索が可能
- 解決できない課題は担当者へシームレスにエスカレーション
- バックオフィスの担当部門にタスクがふられ個別対応
- FAQに無い問合せが来た場合はバックオフィス担当者がFAQに情報追加
コンシェルジュの活用によって、毎年数千名規模の採用をしてもバックオフィスの従業員規模は大きく変えずに済むほど効率化が進んでいるといいます。
このように、積極的なITの活用が組織の効率化に貢献する事をSalesforceが理解しているから、従業員エンゲージメントを強化しているわけです。
更に、コンシェルジュの仕組みを外販して自社の売上にも繋げており、競争力を強化していることがわかります。
ここまで、Salesforceが従業員エンゲージメントに力をいれる理由を整理してきましたが、具体的にはどのような施策が効果を発揮しているでしょうか。
次の章で具体的な施策をご紹介します。
Salesforceが取り組む従業員エンゲージメント施策とは?
Salesforceが取り組む従業員エンゲージメントの施策は、代表的なものが3つあります。
会社のVisionを全社員に浸透させるV2MOM施策
従業員エンゲージメントを実現していく上で、重要なことの1つとしてVisionが現場まで浸透しているかどうかがあげられます。
従業員の仕事が短調だったとしても、仕事に意味づけができることで、従業員は仕事におけるやりがいを感じるようになり、従業員エンゲージメントが高まるわけです。
Salesforceでは、CEOのもつビジョンを現場のメンバーまで理解して自身のKPIに落とし込む取り組みとしてV2MOMというシステムが導入されています。
それでは、V2MOMとはどのようなものか、解説します。
まず、V2MOMとは次の5つのポイントの頭文字を指しています。
- Vision(会社のビジョン)
- Values(達成したい価値)
- Methods(価値実現のための方法)
- Obstacles(目標達成するための課題)
- Measures(目標達成するための具体的なKPI)
上記の5点を会社全体で共有することで、現場担当者に至るまで、自身の仕事が会社のビジョンにどう結びつくのかを意識しながら仕事に取り組むことができるわけです。
それでは、具体的にどう運用されているかをみてみましょう。
まずCEOが年度始めにシステム上で記載することがV2MOMのスタート。
CEOのV2MOMは会社全体のビジョンと定義され、システム上で配下のメンバーに通知されます。
通知を受けて、CEOに続く経営陣、マネージャー、現場担当者までが上長のV2MOMを意識した自分のV2MOMを完成させていくわけです。
これを毎年繰り返すことで、会社のビジョンに近づけていくのがSalesforceのV2MOM。
経営陣だけが方向性を考えて周知されない会社とは大きく違ってくることでしょう。
SalesforceはこのようにV2MOMを活用することで、社員の会社へのロイヤリティを高め、従業員エンゲージメントの向上に結び付けています。
従業員ジャーニーを1:1メールでサポート
Salesforceが実施している特徴的な従業員エンゲージメントの取り組みの2つ目は、1:1の個別化されたメールで従業員をサポートしている点です。
Salesforceに入社すると、新入社員研修にあたるブートキャンプと呼ばれる研修に合わせて、定期的に会社からメールが送られてきます。
その内容は、例えば研修内容の振り返りから、入社1年を祝うものなど様々。
実は、このメールはマーケティングオートメーションのツールが社員向けに使われており、全て自動で送付されています。
具体的には入社してから1年間、社員が悩むかもしれない事を定義し、マーケティングオートメーションでシナリオが組まれているわけです。
更に、1年たったあとも、社員のプロフィール情報に応じて、誕生日や入社日にお祝いのメールをするなど、気遣いに溢れたメールまで定義されているといいます。
このように、Salesforceは従業員のフォローを自動メールで実施することで、全ての従業員に細かいサポートができ、従業員エンゲージメントを向上させています。
キャリアプランの明確化
Salesforceでは、明確なキャリアプランを公開することで従業員エンゲージメント向上につながっています。
多くの企業では、どのようなステップを踏めば昇進できるのかが不透明な場合が多いもの。それに対して、Salesforceでは学ぶべきスキルや課題を明確化することで、従業員のモチベーションやパフォーマンスを向上させ、従業員エンゲージメントにつなげています。
Salesforceのインサイドセールスを例にみてみましょう。
インサイドセールスにとっては、外勤営業への異動が次のステップとして用意されています。外勤営業に上がることで、収入面でも優遇され、更にマネージャーへの道も用意されています。
インサイドセールスが外勤営業に上がるには、例えば以下のような複数の項目で合格点をとる必要があると決められています。
- KPIの達成(アポイント取得数、アポイントから生まれた商談金額など)
- 製品理解(学習ツールTrailheadのスコアなど)
- プレゼンテーション能力(Salesforce役員向けロールプレイングなど)
- コミュニケーション能力(報告精度など)
上記のように必要なスキルや自身の評価をオープンにすることで、従業員のモチベーション向上に役立てています。
更に、スキルアップのための研修やツールも用意することで、社員の成長を促してパフォーマンスを高めつつ、従業員エンゲージメントを高めることができているわけです。
ここまでご紹介したように、Salesforceでは従業員が入社してからのあらゆるフェーズでエンゲージメントにつながるように施策を用意しています。結果として、従業員のエンゲージメントが高まりパフォーマンスが高まるばかりでなく、離職率をおさえたり、社外へのポジティブな印象を生み出すなど多くの効果が生まれています。
そのような従業員エンゲージメントの作用が、Salesforceの急成長を支えていると捉えることもできるのではないでしょうか。
まとめ:Salesforceは従業員エンゲージメントで成長を促進
今回はSalesforceの従業員エンゲージメントにおける取り組み事例をご紹介しました。
Salesforceは売上20%以上の成長を創業以来続けている成長企業ですが、実は創業以来、Ohanaの理念を大切にしているように、従業員エンゲージメントが意識されています。
具体的にはV2MOM・従業員ジャーニーをサポートする1:1メール・キャリアプランの明確化などです。
こうした施策の結果として、従業員は会社のビジョンを通して自身の仕事を意味づけでき、メールでの手厚いフォローをされて快適に仕事ができます。そして何を頑張れば次のステージに進めるかが明確なため成長意欲を持って仕事に打ち込めるわけです。
以上のことから、Salesforceにおける従業員エンゲージメントにおける取り組みが、結果としてSalesforceの急成長を支えているといっても過言ではないでしょう。
従業員エンゲージメントを自社の経営に活かしたいと考えている方は、Salesforceの取り組みを参考にしてみましょう。