最近、部内や社内に目標達成への意気込みが感じられない、などと思われたことはないでしょうか?企業は人で構成されているもの。部内や社内の雰囲気は、従業員の「元気」や「やる気」にとても左右されます。

人の元気や意気込み、やる気をモチベーションといいますが、今回はその概要や調査の方法、従業員のモチベーションを上げていく施策などについてご紹介していきます。

モチベーションとは

モチベーションに関わるお話しを進めていく前に、まずはその概要について確認をしておきましょう。

モチベーションの定義とモチベーション理論

モチベーションとは、人が何か行動を起こす際の「動機づけ」や「目的意識」、広くは「やる気」や「意欲」までを表す言葉です。ビジネス上での定義としては「仕事への意欲」や「目標達成への意気込み」のような使われ方もします。

モチベーションは、モチベーション理論(動機づけ理論)として1950年代に広く研究が行われました。「マズローの欲求段階説」や「マクレガーのX理論Y理論」という名前を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

当時は「人は何によって動機づけられるのか」といった、動機づけ自体の研究が中心でしたが、現在では「人はどうやって動機づけられるのか」という動機づけの過程や方法を重視した研究が行われています。

モチベーションとエンゲージメントの違い

企業における従業員のモチベーションについて話される場合によく出てくるのが、エンゲージメントという言葉です。

エンゲージメントは、従業員の会社に対する「愛着心」や「思い入れ」を表す言葉で、モチベーションとは違う意味を持つ言葉です。一昔前によく使われた「愛社精神」に近い言葉かもしれませんが、一般的にエンゲージメントが高くなると従業員の職場定着につながり、離職率が下がるといわれています。

モチベーションとエンゲージメントは直結する

モチベーションは従業員本人の「意欲」を表し、エンゲージメントは企業や組織への「愛着心」を表します。この2つは違う言葉ではありますが、共に従業員が企業(組織)で働く心持ちを表したものです。

どちらかが欠け、片方だけの状態では会社と従業員の関係が継続していくとは思えません。

従業員の意欲を維持するための一つの要素が会社への愛着心であり、愛着心を維持するためには従業員に意欲を持って働いてもらう必要があるといえるでしょう。

従業員のモチベーションが低いとどのような問題が起きるか?

ここでは従業員のモチベーションが下がってしまった場合に、どのような問題が社内で起きるのかを考えてみましょう。

生産性の低下

ある会社が従業員のモチベーション低下による生産性への影響を調査したところ、モチベーションの高い従業員と比較して、モチベーションの低い従業員の生産性は30%以下であったという結果が出ました。

このような状態は、モチベーションの低い従業員だけでなく周りの従業員にも影響が及んでしまいます。こなせない仕事のフォローが必要になることはもちろん、生産性の低い状態が許容されていることは不公平感の発生にもつながってしまうからです。

また仮にこのようなモチベーションの低い従業員が後輩従業員や新入社員への教育を担当するようなことがあれば、問題がさらに広がってしまう可能性もあります。

社内ムードの停滞

モチベーションの低い従業員が増えると、社内の雰囲気にも影響が出ます。上記でも述べたように、生産性の低い状態が許容されていると他の従業員が感じれば、最初は不公平感を抱く程度の気持ちもやがては大きな不満となり、モチベーションの低下が広がっていきます。

社内ムードの停滞は会社全体の生産性低下にもつながり、他社に対する競争力低下も招きかねません。

また、一度始まってしまった社内ムードの停滞を解消することは、容易なことではありません。早めに対処を行わなければ、優秀な従業員の離職などにもつながっていきます。

離職率の上昇

社内ムードが停滞しているにも関わらず有効的な対策が行われないと、多くの従業員は会社の先行きに不安を感じるでしょう。

一人の従業員のモチベーションの低下は周りに伝播し、会社全体の生産性を下げ、やがては従業員の離職まで招いてしまう可能性があるのです。

このような状況を招かないためには、従業員一人ひとりのモチベーション調査と結果分析、問題への早い対処が何よりも重要なのです。

モチベーションを高めるにはまず現状の調査から

昭和の時代には叱咤激励や報奨金などでやる気を高める方法も行われていましたが、いわゆるアメとムチだけでは従業員のモチベーションは上がりません。

重要なことはモチベーションが下がる原因が何であるのか、しっかりとした調査と分析、そして問題への素早い対処です。一般的に従業員のモチベーションを調査するには、以下のような方法が用いられます。

従業員エンゲージメントサーベイ

従業員エンゲージメントサーベイ(調査)とは、従業員が会社や組織の目標達成に主体的に関与していきたいという意欲や、組織への帰属意識を調査する方法です。一般的にはインターネットやイントラネットを活用したWebベースの調査で、設定された質問に対して回答することにより、従業員の意識を調査します。

2021年6月に東京都産業労働局が行ったテレワークの実施率に関する調査によると、従業員30人以上の都内企業でのテレワーク実施率は63.6%となっています。またテレワークに関するほとんどの調査では、多くの従業員がコミュニケーション不足を不安要素として挙げています。従業員同士が顔を合わせる機会が減ることで、チームワークの悪化や団結力の低下などにもつながりかねません。

感染症対策だけでなく、働き方改革の一環としても普及するテレワーク。従業員の意欲や帰属意識を知ることは、企業経営の上でとても重要な課題となっているのです。

調査結果の分析、改善

従業員エンゲージメントサーベイで、帰属意識やモチベーション低下の原因が判明したならば、次に重要なのが対策です。エンゲージメントサーベイはアプリの種類にもよりますが、その問題が会社全体のものなのか、組織単位なのか、また属人的問題なのかがはっきりするはずです。問題が明らかになったなら素早く対策を打つことが重要です。

まずは会議の席などで結果発表を行って改善するべき点を明確にし、いつまでに、誰がどのように改善していくかを示さなければいけません。対応が遅れれば、影響は周りにどんどん広がっていきます。対策は早いほど効果が上がると覚えておきましょう。

従業員のモチベーションを上げるための事前の施策

サーベイ結果に対する対策も重要ですが、他にも普段から行えるモチベーション低下への対策があります。ここでいくつか挙げておきましょう。

定期的な面談とフィードバック

たとえば年度の始めに目標設定をしておき、半期ごとにフィードバック面談を行うことはモチベーションの維持にとても効果があります。

結果は良いときも悪いときもあるでしょうが、常に見てくれているという安心感が従業員には生まれることでしょう。

目標設定

目標設定は、手の届かないような高いものではなく半期、もしくは1年間努力すれば達成できる可能性のあるものにしておくことが重要です。

インセンティブ

インセンティブとは、人にやる気を起こさせる刺激や誘因という意味ですが、一番わかりやすい例は営業パーソンに与えられる歩合や報奨金といったものです。インセンティブは現金に限ったものではありません。目標達成の励みになるようなものを面談時に提示できれば、意欲の向上が望めるでしょう。

まとめ

事前の施策と定期的な意識調査、そして問題点の改善。この3つの方法を確実に実行し従業員のモチベーション低下を防いでいきましょう。