あなたのチームは、率直な意見や質問を交わし合って仕事ができているでしょうか。また、あなたの部下やチームメンバーは、そのように働けていると実感しているでしょうか。
これには、あなたのチームの心理的安全性の高さが大きく影響します。
今回は、心理的安全性にとことんこだわって、生産性の高いチームへ成長するために必要なことについて述べていきます。
心理的安全性とは
心理的安全性の定義
「チームの心理的安全性」という概念は、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンソン氏が最初に提唱しました。
その概念とは「対人関係においてリスクのある行動をしても、このチームでは安全であるという、チームメンバーに共有された考え」と定義しています。
社会人として経験を積み重ねていると、「そもそもこの目的は?」などの簡単な質問をすることは、難しいことではないと思うかもしれません。
ですが、新入社員だった頃を思い返してみると、誰もがこんな経験があるのではないでしょうか。
- こんなことを質問したらそんなこともわかっていないのかと思われてしまうかも
- 違和感を感じるが、目上の人に意見はしにくい
- この意見を言ったら、周りから拒絶されるかもしれない
このような経験がある場合は、あなたの中でその時のチームの心理的安全性が高くはなかった可能性があります。もしかすると、良くない結果になってしまい「やっぱり…」と思った経験があるのではないでしょうか。
では、心理的安全性を高めるには何が必要か、まとめていきたいと思います。
なぜ今、心理的安全性が注目されているのか?
もともとは、グーグル社が約4年にわたって実施した、生産性向上のためのプロジェクト「アリストテレス」によるものですが、そこに現在の社会状況が大きく影響しています。
2019年末に発生した新型コロナウイルスの流行により、誰もが先の見えない、変化の連続の日々を過ごすようになりました。何が正解かがわからない中で、それでも前に進まなければなりません。
企業の感染予防対策も急務になり、リモートワークを増やしたり、新たに急ピッチで整備・導入したところも多いのではないでしょうか。感染予防のため、国内外に関わらず、商談やミーティングなどは、オンライン完結が当たり前になったところも多いかもしれません。
その中で、オンライン化によるコミュニケーションの難しさによる、チームや組織全体の生産性の低下が課題として注目されるようになりました。
雑談でチームワークを向上させるために、雑談のためのコミュニケーションツールを導入したチームや企業について報道されることも増えています。
そのような一つ一つの小さな工夫とは別に、根本的なチームのあり方を改善する必要があると考えるようになってきたところが増えてきたタイミングで、心理的安全性に大きな注目が集まったのではと考えます。
そして心理的安全性の高さが、コロナ禍に課題を抱えるチームと、変わらず成長していけるチームに大きく分かれる要因ともなっています。
心理的安全性を高める4つのメリット
情報やアイデア共有が活発になる
不安を感じて発言することを控えることがなくなると、自分の意見や質問を安心して出すことができるようになります。その結果、積極的な議論や情報共有、アイデアの共有が活発になります。報連相の問題で悩むことも大幅に減少することと思います。
チームの中で、自分が意見をあげることで避難されたり、罰せられたりすることがない環境であるとメンバーが感じていることが重要で、納得しながら目標に進んでいくチームに成長できます。
失敗などのネガティブな情報もオープンになり安く、早い段階でチームで対応することが可能になってきます。
現状を良くするためのアイディア発信が活発に行われるため、チームや組織内でのイノベーションや改善が促進されます。
従業員エンゲージメントの向上
心理的安全性の高いチームで働くことができると、自分の能力を生かして働いているという気持ちでやりがいをもって働けるようになるため、チームや組織への愛着心が深まって、エンゲージメントが向上します。
従業員のエンゲージメントが向上すると、離職率の低下にも繋がり、優秀な人材が外部に流出していくことを防ぐ効果もあります。また、従業員エンゲージメントが高い組織には、優秀な人材が外部から集まってきます。
そうすることで、優秀な人材が揃ったチームを形成することができるようになり、組織全体の生産性向上に繋がります。
組織が目指すビジョンの明確化
心理的安全性が高いチームは、組織の目標や課題に対して、チームのメンバーが自分の意見をしっかりと出し合う建設的な議論を行うことができます。
チームや組織で議論しあって考えたビジョンを全体で共有でき、言語化して外部にも発信することでよりチーム力が高まり、目指すビジョンが明確になります。
その効果として、日々の大小ある業務に意味を感じながらチームメンバーが取り組むことができ、明確なビジョンに生き生きとしたチームで向かっていくことができます。
チーム力の向上:生産性の高いチームへの成長
心理学では、「フロー」という言葉があります。フロー状態の人とは、そのとき行っていることに夢中になったり、完全にのめり込んでいたり、精神的に集中している様子を指します。
フロー状態では、いわゆる幸せホルモンと呼ばれる、神経伝達物質のドーパミンやエンドルフィンなどの分泌が増加し、ストレス値が下がります。
心理的安全性が高くなってくると、チームや組織にフロー状態が生まれます。その結果として、メンバー全体が安心してその仕事に集中して取り組無事ができるようになります。
高い生産性を上げると同時に、一人一人が楽しさややりがいを感じながら、そのチームや組織に「自分がいる意味や果たしている役割」を意識しながらビジョンに向かって進むことができます。
どんな人でも、安心して自分らしく働ける職場で能力を生かすことができれば、チームへの貢献度も上がり、生き生きとした気持ちで仕事をすることができます。メンタルヘルスの問題の減少効果も期待することができるでしょう。
心理的安全性を高めるには?
リーダーができること
チームや組織のメンバーが、自分の意思を大切にし、チームとして日々意見や質問を交わしながら、仕事から充実感を得られるために、リーダーが大切にしたい考えが2つあります。
1.自分自身も「問題」の一部であることを認識する
例えば、「このチームメンバーが報連相をしっかりしないことで私が困っている」と考えたとしても、その問題の中には自分もいることを忘れずに考えましょう。
- 自分自身がどう働きかけたか
- その行動に意義があると相手に実感させるような何かを与えたか
という観点を忘れてしまいがちで、他のメンバーの責任として考えてしまうことが多いのです。
自分自身の行動が、他の人のきっかけになっていることを意識しながら、自分自身の行動を柔軟に変化させることが必要になります。
2.自分の行動を振り返る
具体的には、自分自身が変わるべきポイントを洗い出してみることです。
- 成長を期待してかけた言葉が、実は本人に不快な思いをさせていた
- 部下がフィードバックを求めているタイミングで、多忙を理由に断った
- 意見を出しにくそうなことに気がついて、拾ってあげられたか
- 部下の守るべき秘密を他の人にもらしてしまっていないか
チームや組織に心理的安全性をもたらそうとする時に、重要な視点についてご紹介しました。
これらのことを意識した上で、グーグル社が推奨しているステップは以下のとおりです。
1.共通認識をもつ:組織内で培いたいチームが取るべき行動や行動規範の定義
Google re work
2.チームの力学について話し合う場を作る:いつも話しにくい話題について、オープンに、建設的に話し合うための場をセットする。
3.チームの強化と改善にリーダーを巻き込む:継続的な改善やモデル化を促す
チームのメンバーができること
チームの心理的安全性を高めるために、個人でできることもあります。
仕事を実行の機会ではなく、学習する機会と捉える
今やっている重要な業務は何か?を考え、話し合い、その業務にどんな大切にしたいポイントがあるかを言葉にしてみます。一般的に社会的に大切なことではなく、「私が」大切にしたいことを考えます。
その大切な業務により、どんな人やものが影響を受けるかをイメージし、そこに向かって仕事をしたいという気持ちがあるかどうかが大切です。
それを考えることで、日々のの業務や単なるタスクが「意味のある仕事」になり、そこから学んだり発見することが増えて、仕事が充実していきます。そしてチーム内で共有することで、チーム全体の生産性のアップにもつながります。
自分が間違うことを認める
少しずつ役職が上がっていったり、部下ができるにつれて、自分の間違いを認められなくなったり、間違ってはいけないと思ってしまうことで、心理的な柔軟性や安全性が低下します。
自分だけで多くのことを背負い込みすぎず、教えてもらったり、助けてもらったり、知らないことを尋ねたりすることは、より話しやすいチームに必要なことです。過去の失敗についてチームメンバーと共有することも、良い効果があります。
お互いにできることを出し合う必要があるから、チームで動いていることを忘れずに「助け合える」「助けてと言いやすい」チームに変わっていきましょう。
好奇心をかたちにし、積極的に質問する
チームのメンバーをよく観察していると、自分にないスキルを持っていたり、知らないことを知っていることが多いことに気がつくでしょう。
そのような時には、好奇心からでも全然構いませんので、相手に質問してみることがチームのコミュニケーションの活性化につながります。そこから、知らなかったプライベートの一面を知ることもあるかもしれません。相手が大切にしている価値観を知ることもあると思います。
同時に「自分がそのことについて知らない」ということを、相手に自己開示することにもなり、相手も自分の得意なことについて伝える機会を得ることができます。
まとめ
心理的安全性を高めることで、チーム力を向上させて、生産性の高いチームに成長していけることはもちろん、チームメンバーのメンタルヘルス向上や離職率の低下にもつながります。
パルスアイで算出することができるチーム力の向上にも心理的安全性は影響しており、効果的なチーム(生産性の高いチーム)になるために大切な要素であることがわかります。
まずは自分のチームのメンバーを見渡し、チームが大切にしているところを共有しながら、取り組みやすいところから始めていきましょう。