中間管理職(ミドルマネジメント)とは、業務の達成に向け現場の社員に対し指示を出す立場にある社員を指し、企業の成長にとって欠かせない存在です。上層部と一般の社員との間に立ちコミュニケーションを取りながら、自身の業務の遂行にもあたるため、さまざまな面で高い能力が必要とされます。では、優秀な中間管理職を育成するためには、企業側はどのような施策を行うべきなのでしょうか。組織のマネジメントの要となる中間管理職の役割や求められる能力などを踏まえ、その育成方法について紹介します。

中間管理職の役割と求められる能力

会社の業績アップのためには、優秀な中間管理職の存在が欠かせません。そんな中間管理職が果たす役割は主に「業務の管理」、「良好な労働環境の確保」、「人材育成」「部門間や企業トップとの橋渡し」の4つに分けられます。具体的な内容と組織マネジメントのために必要なスキルについて見ていきましょう。

中間管理職の役割について

中間管理職には以下のような役割があります。

業務の管理

中間管理職にとって、組織内の業務の管理は大きな役割のひとつ。自らが現場に出ることもありますが、多くの場合は部下に業務を割り振り、プロジェクトが円滑に回るよう適切に管理します。社員の業務内容や進捗を把握し、問題があれば都度フォローしたり、業務の再分配をしたりするなどの改善も行わねばなりません。そのためには、部下の特性や強み(弱み)を理解した上での適切な人材配置や予算管理能力なども必要になります。

良好な労働環境づくり

部下の働きやすい環境を整えることは、現場の生産性を高めるのに非常に有効です。たとえば、社員がメインの業務に専念できるように業務の一部を外注スタッフに依頼したり、勤務体制に無理がないか、残業が続いていないか、部下の体調やメンタルを把握したりする必要があります。また、組織内のコミュニケーションを円滑にするための心配りや、社員のモチベーションを高めるため同じビジョンを共有するなどもミドルマネジメントの役割となるでしょう。

人材育成

中間管理職には部下の管理のみならず、育成にも目を向けなければなりません。目の前の業務について指導しながら、さまざまな経験を積ませ、より組織にコミットできる人材へと育てます。時には資格取得を促したり、部下の悩みを聞いてアドバイスをしたりするなど成長面でのサポート役を担うことも。また、自身が見本となって行動することも求められます。

部門間や企業トップとの橋渡し

業務の中には、部門間の連携が必要になることがあります。そういった場面で他部署のミドルマネージャーらと話し合い、業務が円滑に進むよう調整するのも中間管理職の役割です。また、経営陣やより上位の管理職に現場の要望を伝えたり、反対に経営側のビジョンや企業として取り組むべきことを一般社員に共有したりするパイプ役としても重要な立場となります。

求められる能力

中間管理職が持つべきスキルについて解説します。

コミュニケーション能力

部下との関係性の構築や部署間の調整、そしてトップマネジメント層と渡り合うためにはコミュニケーション能力が不可欠です。それは必ずしも対象と個人的に親しくなることではありません。社内外を問わず相手の立場を尊重しながら会話をしたり、上司と部下との意識のズレをなくすために双方にわかりやすく説明したりする、いわばビジネス上の信頼関係を築くための能力と言えます。コミュニケーション能力が高ければ交渉をスムーズに進め、部署内の空気を明るくし、社員のモチベーションを上げる効果も期待できます。

事業推進力

業務の遂行のために、的確な目標設定をし、要所での決定を出す事業推進力も、中間管理職に必要なスキルと言えます。例えば、部下を適切に配置し、個別のミッションを与え進捗を管理・アドバイスをし、顧客からの要求が部下の裁量を越えていたときは速やかに判断するなど、臨機応変な対応が求められます。この時、個人的な感情や過去の成功例にばかり寄りかからず、論理的思考をもって判断することが重要です。中間管理職は部下を通じて成果を上げることが求められるため、チームをまとめる手腕を発揮できるかが評価の分かれ目になります。

課題解決力

業務中に問題やトラブルが起きた際、課題解決に向けさまざまな提案を実行していくのも中間管理職が果たすべき役割。物事を冷静に俯瞰し、課題解決に向け何ができるか考えて行動する能力が問われます。経験が浅いと、課題の分析や判断に迷いが生じ、損失を増やしかねないので注意が必要です。その都度的確な対応ができる瞬発力を磨きましょう。また、部下が起こしたミスやトラブルは責めすぎると仕事へのやる気を削いでしまうことも。再発防止のための意思共有ができたら、励ましの言葉をかけるなど心配りがあると信頼感がアップしそうです。

中間管理職を育成するための3つの方法

企業の成長には優秀な中間管理職の存在が欠かせませんが、難しいのが「育成」です。中間管理職の育成は短期で成し得るものではないため、時間をかけながら段階的に育てていくことが重要です。

社内に学びの文化をつくる

まずは、学びの文化を社内に作りましょう。内容は、仕事に結びつくことだけに限らず、業務外のことでも構いません。学ぶ環境に身を置くことでさまざまなことに気付けるようになり、仕事においても変化や新たな挑戦を受け入れやすくなります。学びの機会を増やすためには、書籍購入や研修費用を受け持つなどの福利厚生を充実させるのも有効です。

研修を実施する

次に行いたいのが研修です。リーダーシップには、「ひらめき型」「変革型」「取引型」など、さまざまな種類があります。研修を受ける際、それぞれのスタイルにあった研修を受けるのも効果的。時代背景や社会の動きを踏まえた内容で、定期的に実施していくのが良いでしょう。

中間管理職にコーチをつける

また、中間管理職自身に、対話を通して自己成長を促す役割のコーチをつけるのも効果的と言えます。その際、日記を付けるとより効果が高まるでしょう。自分が受けたマネジメントのうち、効果が高かったと感じることや、分かりやすかった教え方、嬉しかった声かけなどを記録することで、その方法をそのまま部下育成に生かせます。

中間管理職の育成は一朝一夕には終わらないもの。上司や人事が「時間をかけて育成するもの」と認識し、長い目で見守ることが重要です。

中間管理職が抱えやすい悩みと会社が気をつけたいこと

中間管理職になると、一般社員とはまた違った悩みやストレスにさらされることになります。「中間管理職がツライと感じる瞬間ランキング」から、多くのミドルマネジメントが陥る悩みについて見ていきましょう。

1位「板挟みになるとき」

中間管理職は会社の上層部と一般社員の間のポジションです。そのため上からの圧力と現場の声の間で苦悩する人が多いのがうかがえます。どちらの言い分もわかるからこそ、尚更悩ましいのかもしれません。安易に解決できることでもないため、“板挟みの悩みは中間管理職の永遠のテーマ”とも言えるでしょう。

2位「部下を指導するとき」

中間管理職にある人の中には、部下に指示を出したりするのが苦手な人や、注意したりアドバイスしたりがうまくできない人もいることでしょう。そういった方の場合は、部下が思うように動いてくれないことが気がかりで、管理職の業務に支障が出たりする可能性もあるので要注意。また昨今では、「部下に注意する際にハラスメントと思われないか不安」といった声もあるようです。

3位「仕事が多岐にわたるとき」

管理職になり、仕事量が倍増したという声は多く寄せられています。中にはマネジメントだけではなく自分が現場に出なければならなかったり、イレギュラーな業務に時間を取られたりといった人も。加えて部下の育成やフォローも行わなければならないのは、ミドルマネジメントの人々の大きな負担になっているようです。

そんな実状から、心身の不調を訴える中間管理職の方も少なくないよう。なかなか見えづらい社員のメンタルのケアには、管理ツールの活用もオススメです。AIを活用することでメンタル状況の把握だけでなく、社員のモチベーションやエンゲージメントといった心理的な状態をスコアとして把握することも可能。業務量を改善し、より根本的な対策を取るなどの施策を適切に取ることができるようになるでしょう。

まとめ

厚生労働省の委託で三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめた調査によると、適切な雇用管理が5年以上行われている企業は、現状の業績が総じて良いという結果が報告されています。また、雇用管理施策を実施している企業は、人材確保においても満足度が高いとするデータが見て取れます。つまり、中間管理職の育成は企業の成長にとってなくてはならないものであり、じっくり時間をかけて取り組んでいくべき課題だと言えるでしょう。