Googleの親会社であるAlphabetは、ビジネスSNSのLinkedInが発表した働きたい企業2位にランクインしています。ランキングの理由としては、企業の伸びしろや領域などもありますが、その大きな要因の一つ従業員へのエンゲージメント施策だと言われています。Alphabetそして、Googleの社内施策に関する多くの本が発売されておりご存知のかたも多いかとも思います。ここではAlphabetそしてGoogleが実施している従業員エンゲージメント施策の事例をご紹介します。ぜひ参考にしてください。

Alphabetについて

最初にAlphabetの会社概要についてご紹介します。

会社概要

AlphabetはGoogle含むグループ会社の持株会社として2015年に設立された企業です。子会社にGoogleを中心にX、Google Fiber、Sidewalk Labsなどがあります。

Alphabatはの起源となるGoogleは1998年にラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンによって創業されました。「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」のミッションを掲げております。現在のCEOは、サンダー・ピチャイです。

サービスは多岐にわたっており、Googleの検索エンジン、Googleドキュメント、Gmail、Andorid、ChromeBookやXでは自動運転の開発やバルーンでのインフラ開発などを進めております。現在時価総額は2兆ドルを超えています。

沿革

  • 1998年 Google Inc 創業
  • 2000年 Google Adwordsを開始
  • 2004年 Gmail開始・株式公開
  • 2006年 YouTube買収
  • 2009年Andoroidのスマートフォン発売
  • 2015年Alphabet設立・サンダー・ピチャイGoogleCEO任命
  • 2019年AlphabetCEOにサンダー・ピチャイ任命
  • 2021年時価総額2兆ドル突破

経営者のプロフィール

現在のAlphabetのCEOはサンダー・ピチャイ氏です。2015年に創業者のセルゲイ・ブリンやラリー・ペイジ氏を引き継ぎCEOに任命されました。インド工科大学カラグプル校で工学士の学位を取得。その後、スタンフォード大学で理学修士(MS)、ペンシルヴェニア大学で経営学修士(MBA)の学位をそれぞれ取得後、コンサル会社マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社しました。その後2004年にChromeOSやGoogleMapのプロダクトマネジメントに従事していました。2015年にGoogleのCEOに任命されましたが、2019年にAlphabetのCEOにも任命されました。

Alphabetにおける従業員エンゲージメント

Alphabetでは、心理的な安全性を重視した組織づくりやエンゲージメントが高いいきいきとした職場づくりなどを重視して様々な人事施策を実施しております。それにより働きたい職場1位などを8回連続取得するなどをしています。ここで代表的に行っているエンゲージメント施策の一部をご紹介します。

社員からのフィードバックにオープン

多くの企業では経営陣と社員が会話をしたり、直接フィードバックをする機会は少ないことも多いのではないでしょうか。しかし、Alphabetでは社員が気軽に経営陣をフィードバックやアイデイアを共有したり、経営陣がフィードバックに対して対応できるような仕組みを導入しています。経営陣も社員からのフィードバックに対してGoogleでは従業員のフィードバックをオープンに受け入れ、対応できるような様々な取り組みを導入しています。ここでは代表的な取り組みをご紹介します。

TGIFミーティング

TGIFミーティングは、Thank God It’s Friday の略からきているAlphabetの中で行われている全社ミーティングです。社員が経営陣に対して率直に質問ができたり、会話ができる会議体のことであり、社員と経営陣がコラボレーションする機会です。Google創設時から20年近く実施をし続けており、新型コロナの影響下でもリモートで実施しています。

通常問題が起きても中間管理職に報告をして、若手社員の声が経営陣に届くことも少ないかもしれません。しかし、このように社員と経営陣が直接コミュニケーション取れる機会を持つことで社員も自身のフィードバックをオープンに共有することができます。

Fixits

フィードバックもただ聞くだけでは意味がありません。Alphabetではカルチャーとして発生した問題に対応するためにその問題解決に集中するためのFixItsというスケジュール項目があります。FixItsでは他の作業を忘れ問題だけに集中して対応することを求められます。その結果、社員からあがってきた課題もたらい回しにされずに解決に向けて対応されます。

従来はエンジニアが24時間確保して後回しになっている問題に集中して対応し解決を狙うというものでした。現在は時間も短縮されていますが、経営陣などのスケジュールを抑えることでフィードバックから上がってきた問題の解決までにも取り組むカルチャーがあります。

社員に対して自由な裁量権

企業にとって社員のモチベーションを維持するのにも大きな問題となっているのが従業員の燃え尽き症候群です。業務だけに追われていることにより自分が本当は何をしたいのかなどがわからなくなり、社会に復帰できなくなるような症状です。このようなモチベーションを管理するためにもAlphabetでは従来より社員に対して自由な裁量権や挑戦できる環境づくりを与えるような取り組みを行っています。

20%ルール

そのための取り組みの一つが20%ルールです。20%ルールとは、業務割合の20%を自身がやりたいプロジェクトに取り組むというものです。3Mなどでも導入されていて知っている方も多いかもしれません。Googleでは自由に取り組むことをルール化してしまうことで社員が後ろめたくなく自分がやりたいことを取り組める環境を作成しています。このルールは、クリエティビティにもつながっておりGmailやAdwordsなど今Googleを支える重要なプロダクトを開発するきっかけにもなりました。

20%ルールは大きな負荷にもなるという視点もありますが、自分がやりたいことをプロアクティブに取り組めるということもAlphabet、Googleでは採用基準として重要となっており、このような環境を楽しめる社員が多いという側面もあります。

OKR

OKRとは、Alphabetで用いられている目標管理フレームワークです。OKRとは、「Objectives & Key Results」の略であり、全社の目標から個人の成し遂げたい目標を設定し、その目標を達成するための指標を計測することで目標管理を行うものです。

従来の目標管理として用いられていたMBOやKPIは現実的な目標を設定して100%の達成率を目指すものでした。しかし、OKRで目標を設定するときのポイントは、達成率は60−70%程度を目指し、ストレッチで挑戦的なものに設定します。このようにあらゆる目標に100%を目指すことが絶対でなく、失敗が許されチャレンジしやすい環境を形成する一因になっています。

また、OKRは全社の目標から個人の目標を検討するため、社員自身が自分の業務が全社の成長につながっているという実感を得ることができ、モチベーション向上にも繋がります。

カルチャーを構築するための定量的仕組み

社員のモチベーションやエンゲージメントを向上するために重要なのが自社のカルチャーです。Alphabetではカルチャーを作り上げるときにもただ経営陣のアイディアだけで検討するのではなく、定量的に社員を把握したり、カルチャーを構築する仕組みを導入しています。

People Analytics

People Analyticsとは、人材に関するデータを収集し、分析し客観的に人材に関する判断を行う仕組みです。従来、採用や配属などは社員の経験と勘により判断していることも多いと思います。しかし、その結果ミスマッチが発生してしまい社員が思ったようなパフォーマンスを発揮できなかったり、昇進など社員が納得を得られずわだかまりを作るきっかけになってしまうかもしれません。

Alphabetではそのようなことを避けるためにも、ただ管理職の経験や勘に依存するだけでなく、客観的なデータに基づいた分析を行うPeople Analyticsを導入しています。People Analyticsを活用し、社員の年齢、性別、面接時の印象、スキルなど多様なデータをデータベース化し、パフォーマンスと評価を掛け合わせることでどのような人材が必要なのかなどを明確にして採用に活用しています。その他に社員に定期的にアンケートを行い、モチベーションやパフォーマンスを維持や最適な組織構造を検討するのに活用しています。

社員がリラックスしたり、コミュニケーションが取れるオフィス設計

Alphabet、そしてGoogleのオフィス環境について知っている方も多いと思います。Googleでは、社員の働く環境をとても大事にしておりオフィスの設計を充実させています。例えば、社員に健康的な食事を提供するという理念のもとで無料のカフェテリアで3食のご飯を提供したり、睡眠不足を避けるために昼寝ルームを提供しています。

その他、各フロアに軽食ができるキッチンを設置していますが、各フロアごとに違う種類のお菓子や飲み物を置いてあります。そのため欲しい物があるときは他のフロアに行かなければならない状況を作成し、他部署との対話など交流が発生しやすいような環境作りを導入しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。Alphabet、Googleは様々な本などでも人事施策などが紹介されていたり、オフィスに関して特集されているため知っている方も多いかもしれません。しかし、それだけではなく経営陣と社員がコミュニケーションをとったり、客観性を持った判断ができるような仕組みを導入しています。このように多面的な施策を実施した結果、従業員エンゲージメントも高まり働きたい企業2位までに到達しています。今後新たな従業員エンゲージメント施策を行うとしても一面的では意味がありません。小さくても様々な施策を実施することを検討してみてはいかがでしょうか。

新型コロナウィルス以降、リモートワークやハイブリットワークが導入されています。しかし、Alphabetではオフィスはイノベーション、そしてクリエイティビティに大きく影響するということから継続的に投資を行い、社員にとって最適な環境づくりを継続して行っています。