Shopify CEOであるトビー・ルークが社員宛に送ったAI活用の基本方針がリークされまして、その結果、トビー自身がX上でその全文を公開しました。その内容が非常に参考になるというか、日本のほとんどの企業が真似すればいいのでは!?という内容だったので、どの会社でも使える「AI活用の基本方針<汎用版>」として編集したものを紹介します。※ご自由にコピペして使ってください^^

また、後段には、トビーが公開したメモ全文の日本語訳を載せます。shopifyでのAI活用の基本方針の内容を正確に知りたい人は、こちらを読んでください。

AI活用の基本方針<汎用版>

AI活用は全社員の必須スキルです

当社において、「AIを使わない」という選択肢ははありません。そして、AIを上手く使うには、たくさん使って学ぶしかありません。AIを業務にどんどん取り入れていきましょう。

叩き台(試作)の作成にAIを使おう

AIは、叩き台(試作)の作成に向いています。なんであれば、叩き台(試作)は、まずAIに作らせましょう。そして、適切なタイミングで人による手を加え、精度を上げていきましょう。

人事評価にAIの活用状況を加えます

人事評価(個人の業績評価)に、AIをどれくらい活用できているかという視点を加えます。これは、社員がAIを使わざるを得ない状況に追い込むためであり、結果として、個人と組織の生産性を高めることにつながるからです。

自分自身で学び、学びはシェアしましょう

AIをどのように使うかが、社員一人ひとりが自由に実践し、学んでいきましょう。そして、そこで得た学びは、積極的に社内で共有し、知識(ナレッジ)を拡散してください。

人を採用する前に、AIで代替できないかの検証が必須です

AIができることはAIにやらせるべきであり、そのような仕事のために人を増やすべきではありません。よって、人の採用を行う場合には、そのポジションの仕事がAIではできないことを説明する責任があります。

AI活用の基本方針は、全社員が対象です

AI活用の基本方針の対象外となる社員は、社長・役員を含めて一人もいません。全社員が同じように、この基本方針に則って、AI活用を推進することを求めます。

AI活用の基本方針<Shopify版>

チームのみなさんへ、

私たちは今、これまでの歴史上で最も多くの商人や起業家が誕生し得る時代に突入しています。私たちはよく、起業というキャリアを選択できる人を増やすために、その複雑さの曲線を下げようと話しています。起業の道のりには、スキルや判断力、知識を要する数々の決断が伴います。こうした旅路の中で、AIが単に助言を与えるだけでなく、実際に仕事まで担うようになることは、まさに飛躍的な進化だと言えるでしょう。

Shopifyにおける私たちの使命は、未来の最高のビジネスを築くための、間違いなく最良のキャンバスとなるソフトウェアをつくることです。そのために私たちは、常に最先端を走り、最高のツールを取り揃え、商人たちが想像以上の成功を手にできるようにしています。そのためには、私たち自身が絶えず先を行っていなければなりません。

Shopifyでは、AIの活用はすでに“当たり前”の前提です

すでにそうしている方にとっては、このメモは奇妙に思えるかもしれません。そういう方は、AIを思考のパートナーとして、リサーチャーとして、批評家として、教師として、あるいはペアプログラマーとして日常的に使っているはずです。私も常にAIを使っていますが、それでもまだほんの表面しか触れていないと感じています。私のキャリアの中で、これほどまでに働き方が急激に変化したことは他にありません。私がAIに対して抱く熱意については、皆さんも週次の動画やポッドキャスト、タウンホール、そして…昨年のサミットでも耳にしているはずです。

昨年のサミットでは、私はエージェントを使って講演を作成し、その内容を発表しました。これは、AIを試してみようという呼びかけであり、AIの重要性がどのレベルにおいても本質的であることを示すものでした。多くの方がその呼びかけに応えてくれ、AIが私たちのスキルや専門性をどれほど強化し、補完するかを体感してきました。

これまでに学んだことは、AIを上手く使うには、たくさん使って学ぶしかないということです。それは他のツールとは全く異なるからです。当初の「試してみよう」という提案は正しかったのですが、それでは不十分だったということも分かってきました。さらに、他の多くのツールと違って、AIは**“乗数的な効果”を持つツール**です。

Shopifyには、10倍の成果を出すような素晴らしい同僚たちがたくさんいます。そして今、ツール自体が10倍の力を持つようになったのです。こうした人たちが、従来なら手を出さなかったような難題に、AIを巧みに使いながら挑み、100倍の成果を上げているのを何度も見てきました。

数年前の「On Leadership(リーダーシップについて)」という私のメモで、Shopifyを「アリス・イン・ワンダーランド」に登場する“赤の女王のレース”になぞらえました ― 同じ場所に留まるには、全力で走り続けなければならないという意味です。Shopifyのように年率20〜40%で成長し続ける会社では、同じポジションに居続けるためにも、毎年それだけの成長が必要です。それは私にも、そして皆さんにも当てはまります。

これは一見大変そうに思えるかもしれませんが、今のAIの力を考えると、むしろ当たり前のことのように思えてきます。 そしてこれは、私たちのトップパフォーマーたちが求めている環境そのものでもあります。

互いに学び合い、自らも成長しようとする仲間に囲まれ、意味ある価値ある困難な課題に取り組む ― それこそが、Shopifyが提供すべき環境です。そしてそれは、「常に学び続けること」「変化の中でこそ成長すること」という私たちの価値観と深く結びついています。これらはただの理想ではなく、この世界最高のチームの一員であることの“前提条件”です。これこそ、創業者である私たちが望み、築き上げてきたものなのです。


これからどうなるのか

Shopifyのすべてのメンバーにとって、AIの活用は「必須条件」となります。
AIは今日の「万能道具」であり、その重要性は今後さらに増していきます。正直に言えば、今の時点でAIを使わない、という選択肢は現実的ではありません。明日はもっとそうなるでしょう。成長を止めることは、緩やかな失敗を意味します。登らなければ、滑り落ちていくのです。

  • GSD(Get Shit Done)プロジェクトのプロトタイプフェーズには、AI活用を必ず含めること。
    このフェーズは「学び」と「情報の創出」のための時間です。AIはこのプロセスを劇的に加速します。AIを使えば、他のチームメンバーが確認・検討できるようなアウトプットを、これまでの数分の一の時間で生み出せます。
  • パフォーマンス評価やピアレビューでもAI使用状況を確認します。
    AIを使いこなすには、単なるプロンプトだけでなく「文脈の読み込み」や「工夫」が必要です。他のメンバーからのフィードバックを得ることでスキルアップにつなげましょう。
  • 学びは自己主導で。ただし、知見は必ず共有すること。
    最新のAIツールはすでに手元にあります。社内ツール「chat.shopify.io」や、開発者向けの「Proxy」「Copilot」「Cursor」「Claude」なども揃っています。SlackやVaultには、#revenue-ai-use-cases や #ai-centaurs といったプロンプト共有チャンネルもあります。失敗も成功も含め、みんなで共有しながら学び合っていきましょう。
  • 人員やリソースを増やす前に、AIで代替できないかを必ず検討してください。
    「この業務にAIエージェントがすでにいるとしたら、どうなっているか?」という視点は、面白くて建設的な議論や新しいプロジェクトに繋がるでしょう。
  • これは「全員」に当てはまります。
    CEOである私を含め、すべての職種・階層のメンバーが対象です。

今後のビジョン

AIは、Shopify、私たちの働き方、そして人生そのものを変えていきます。私たちはこの変化に全力で取り組みます。 そして私は、この前代未聞の変化に立ち会える最高の場所が、ここShopifyだと信じています。

私たちは、「AIが当たり前に存在する世界で、起業家の姿はどうあるべきか」を再定義していく必要があります。私は、私たちがそれを最高の形で実現すると信じており、そのために皆さん全員の力が必要です。

今年のテーマには、すでに多くのAIプロジェクトを盛り込んでいます。ロードマップは明確ですし、プロダクトは私たちのミッションとより一致するものになります。必要なのは、私たち全員のスキルと野心を、AIの力で増幅させ、商人たちのために注ぎ込むことです。

トビー
Shopify CEO