新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの企業がテレワークの取り組みを始めました。テレワーク(リモートワーク)とは、会社に出社せず、自宅やその他の場所で業務を行うこと。時間や場所に捉われない働き方として注目を集めていますが、一方で環境の変化により効率が失われたり、社員の足並みが揃わなかったりするなどの課題も浮き彫りになっています。テレワーク・リモートワークにおける社員マネジメントで気をつけるべきこと、課題解決の糸口について解説します。

テレワークで感じるマネジメントの課題とは

コロナ禍によって急速に進んだテレワークですが、実際にどれほどの企業が取り入れているのでしょうか。パーソル総合研究所の調査によると、正社員のテレワーク・リモートワーク実施率は全国平均で24.7%(参考:パーソル総合研究所『第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査』速報版。2020年 11月18日 – 11月23日時点)。もちろん、業種によってテレワークやリモートワークが可能かどうかは大きく異なりますが、中には「一度リモートワークの精度を導入したけれど中止した」「テレワークできる日数を制限した」という企業も少なくありません。一体、何がテレワークの課題となっているのでしょうか。

コロナ禍以前は、社員は原則出社し、同僚やクライアントと対面で仕事をする働き方が主流でした。聞きたいことがあればその場で声をかけて確認したり、書類などは手渡しでやり取りしたりするなど、直接のコミュニケーションがほとんど。また、働いている人の顔や声が見えるため、メンバーが今どんな仕事を抱えているか、業務量はどれくらいかにも自然と目が届き、互いにフォローし合う関係性の構築もなされていたのではないでしょうか。

しかし、テレワークやリモートワークにおいてはチャットなどのツールやオンライン会議、または音声通話でのやり取りがメイン。たとえ、オンライン上でお互いの業務を確認したり、リアルタイムでチャットしたりできても、会話やコミュニケーションの機会は減少します。自宅の仕事環境もそれぞれに異なるため、出社時より効率が下がる可能性も否定できません。実際にテレワーク中の方から出た意見としては、「上司に相談しづらくなった」「相手の顔や様子を見て察することができなくなった」「テレワークになり業務に集中できない」「最適な環境で働けていない」などが挙げられます。

その上で、マネジメント側には以下のような課題が発生しています。

・社員を評価しづらい

オンライン上のやり取りのみになると、日頃の仕事ぶりを確認することが難しくなります。特に結果や成果の裏にあるプロセスは見えない部分が多くなり、公平な評価がしにくいのが現状です。

・社員の勤怠を管理しづらい

以前はある程度明確に管理できていた勤怠が、テレワークやリモートワークの場合は曖昧になりがち。実際の労働状況が見えないことで実態を把握できず、長時間労働やサービス残業が把握しにくくなります。

・社員に業務を教えたり、指示出ししたりしづらい

業務を教える/学ぶ環境が減少し、社員の育成がままならない可能性があります。また、業務の進捗が確認しづらく、責任者による適切に指示やアドバイスがなされないため、プロジェクトの進行に支障が出る恐れがあります。

・部下の考えがわかりづらい

日常的なコミュニケーションが減少し、互いについて理解が進まないまま業務が行われてしまい、部下の仕事に対するモチベーションや考え方を把握できないことがあります。ひいてはチームワークの低下、孤独感を助長する事態を招きます。

・社員のメンタルの不調に気づきづらくなった

テレワークが続くことで、仕事のメリハリがつけづらいなどの理由から孤独や孤立感を深める人も少なくありません。しかし、メンタルの不調をオンライン上で察するのは難しく、適切な対処ができない場合があります。

非常に多岐に渡る、テレワークにおけるマネジメントの課題。これらの対策には、オフィスに勤務している時とは違った新たな仕組みの構築や、ツールの使用が求められると考えられます。

テレワーク・リモートワークのマネジメントが上手な企業の取り組み

テレワーク時におけるマネジメントを効果的に行うためには、どのような施策が考えられるのでしょうか。実際の企業の取り組みを見てみましょう。

・株式会社ニット:https://knit-inc.com/

オンラインアシスタントサービス「HELP YOU」を運営する株式会社ニット。創業以来フルリモートを目指し、現在は400名がリモートワーク で勤務。社内アンケートによると、92.9%の人が「HELP YOUで仕事を続けたい」と回答しているなど、社員満足度の高さが特徴の会社です。

同社では、マネジメントにあたる人が、オンライン上で毎日3分ほどメンバーと話す機会を持つことをルーティンとし、さらに「1日1褒め」を実践。これにより、メンバーの自己肯定感を高め、モチベーションのアップにつなげています。また、業務の属人化を防ぐため、コミュニケーションツールを使ったタスクを見える化、チーム制を導入しフォローし合える関係構築をすすめています。

・株式会社マクロミル:https://www.macromill.com/

ネットリサーチの株式会社マクロミルでは、全社員を対象に「出社を前提としない働き方」を就労スタイルの一つにすることを掲げ、働き方の改革を推進。2020年入社の従業員に向け、オンライン交流ツール「Remo(リモ)」を使ったコミュニケーションができる場を創出しています。リアルの場と同じようにテーブルを囲み、参加者が会話できるもので、リモートワークが主体の業務においても横のつながりを作る後押しとなっています。

・株式会社ホリプロ:https://www.horipro.co.jp/

著名なタレントを数多く輩出する芸能プロダクション・ホリプロでは、「jinjer勤怠」を取り入れて、テレワークに合わせた勤怠管理を効率化。これまで申請から承認まで2〜3営業日かかっていた紙ベースでのやり取りから、クラウド上での管理に移行したことで、出社の機会が減り、社員側、マネジメント側双方の負担を減少させました。

テレワークのマネジメントを成功させるために取り組みたい3つのこと

テレワークやリモートワーク時のマネジメントをスムーズに進めるために、3つのアイデアをまとめました。オンライン主体の業務が続く中、企業として何ができるか考えてみましょう。

仕組みづくり

コロナ禍のテレワーク・リモートワークで最注目されているのが「1on1ミーティング」。テレワーク環境下で不足しがちなコミュニケーションの量と質を担保し、社員のコンディションを把握したり、疎外感を軽減したりするなどの効果が期待されています。

また、医療従事者(医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士)が監修する定期的なメンタルヘルスチェック、音声チャットなどを使い気軽に雑談できる場を整えるなど、社員が働くことへの意欲を保つ工夫が必要です。

サテライトオフィスの導入

サテライトオフィスとは企業の本社・本拠地から離れた場所に設置されたオフィスのこと。これまでにもサテライトオフィスを活用することで通勤時間の軽減や家庭との両立が図られてきましたが、コロナ禍においてその流れは加速しています。

自宅で業務に当たるよりも仕事とプライベートのメリハリをつけやすい、設備が整っていることでより業務に集中できるといったメリットがあります。

ツールを導入する

テレワークで業務を進める上ではオンラインツールの活用が不可欠。さまざまなサービスがリリースされているため、使いやすさや利便性を考慮し、適切に導入しましょう。

・ビジネスチャットツール

Slackhttps://slack.com/intl/ja-jp/

個人やチームごとにやり取りができ、さまざまなタイプのファイルの共有にも対応。世界150ヵ国以上の企業で導入されています。

チャットワークhttps://go.chatwork.com/ja/

日本のChatwork株式会社が提供するツールセキュリティ対策に優れています。「TO」機能を使えば、相手にメッセージの確認を促せます。

・勤怠管理ツール

ジョブカンhttps://jobcan.ne.jp/

種々の打刻方法に対応しており、機能性が高く使いやすいツールです。低コストで導入できるのも魅力です。

AKASHIhttps://ak4.jp/

PCやスマホ、タブレットからの出退勤を行うのに便利。GPS機能を使って、どこから出勤しているのかも確認できます。

・タスク管理ツール

Jira Softwarehttps://www.atlassian.com/ja/software/jira

多くの機能が搭載されており、使いやすいようにカスタマイズできるのが特徴。タスクの進捗状況を細かく管理するのに向いています。

Backloghttps://backlog.com/ja/

ガントチャートなどを簡単に作成できるほか、グラフ化にも対応。ベンチャー企業から全新聞社まで、幅広く利用されています。

・組織改善ツール

パルスアイhttps://pulse-ai.jp/

毎月1回簡単なWEBアンケートを配信し、従業員個人と組織の課題を見える化。AIが、従業員の退職リスクを判定し、退職する可能性が高い従業員をいち早く察知することができるほか、社員の本音や、モチベーションやエンゲージメントといった心理的な状態をスコアとして把握するのに役立ちます。

リモートワークでのマネジメント課題を解決するには柔軟な対応が必要

テレワークやリモートワークへの取り組みはさまざまな企業が手探りで進めている最中。アフターコロナを見越した働き方への関心が高まる中、仕組みづくりや新たな業務ツールの導入も効率的に進めていかねばなりません。そのためにはマネジメント側が課題を認識し、オフィス勤務時よりも細かな視点で社員の動向を把握し、柔軟に対応していくことが求められるでしょう。